「本日はお日柄も良く……」
その言葉はぎこちなく飄々とした態度も表情も出来ず、カチコチと身体を動かし、ほとんど棒読みみたいに喋っている不破信二に私とススハムは困惑していた。
やっぱり、ああいう人でも緊張するのね。
……しかし、お見合いに来たというのに不破一族のお相手は二足歩行の動物形態のままであり、パンダやトラ、黒豚に比べればましですけど。何故、頑なに人間の姿を隠しているのでしょうか。
「ん!ん!」
「?どうかしたの、しとり」
「わんちゃん、なでたい!」
「……多分、それはダメですよ?」
ワキワキと両手を動かすしとりの視線には袴に着物、肩衣を纏った真っ白な犬。おそらく男性、お見合いを申し込める程度には年配のお方に触って良いのかと訊ねるのは些か怖いものです。
そう思いながらしとりを制止しようと隣に視線を戻すといつの間にか消えていて、ワシャワシャと真っ白な犬のお腹を全力で撫でているしとりがいました。
「きゃふぅんっ!!」
「景、どうするよ」
「謝れば許して貰えますかね」
「だあう」
ひとえも触りたいのか。
小さな手を伸ばしていたら、ぽふんと綺麗な振り袖を纏った黒猫がひとえの手を握ってくれた。
「可愛いですね、善い子です」
「んだあ!」
お見合いを台無しにしてしまったのかと不安になっていたけど。どうやら問題なく進んでいくようなので安心しました。
ただ、しとりにお腹を撫でられているお父さんの犬は「わふぅんっ!!」と嬉しそうに鳴いている。あれは私にはどうすることも出来ませんね。
チラリと不破一族を見ればサムズアップを送っていたので無視しました。────と言うより、何故ドクトル・バタフライが不破一族の席に参列を?
そう困惑する私を他所に楽しそうに会話は広がっていき、ぎこちなかったお見合いは粛々と進行を続けて、不破信二は少しだけ真剣に話を聞いている。
「……ゴホン、あとはお若いもの同士で」
「ん!ばいばい、わんちゃん!」
「お、おお、さらばだ、魅惑の手よ……」
魅惑の手って、すごく気に入られたのね。
しとりを左之助さんに預け、ひとえを抱っこして研究所の中を歩いていると「ひみつ道具」の一部が廊下に侵食しているのが見えた。ちゃんと物置小屋に仕舞わないと大変なことになりますよ、これ。
「しとりとひとえもいずれ……くっ」
「それ、何年後のお話ですか」
まだ四歳と零歳なのにもうお嫁さんに行く事を想定したって大変なだけですよ。今はまだ小さくて可愛い私達の愛娘なんですから、それで良いじゃないですか。