ひとえを抱っこして、しとりと一緒に歩く私に何人か目を向けるけど。私が小柄だから驚いているのか、それとも老け顔だから驚いているのか。
一体、どっちなんだろう。
……あれ?
そういえば最近は老け顔や歳上と思われることが少ない気もする。まあ、ポジティブに考えれば若く見られていると妄想しておけば被害も少ない筈ですね。
「ん!母ちゃん、おんせん!」
「呪泉郷じゃない足湯ですね」
カエルやシカの溺れた足湯とは?なんて思いながらガイドブックを閉じて、お仕事の相手と遭遇した左之助さんは楽しそうに話し合っている。
折角の家族旅行だったんですけど。
ちゃぷんと足を動かして足湯の水面に波紋を作る。ひとえがもう少し大きくなったら姉妹で一緒に訪れるのも良いかもしれません。
しとりとひとえの健やかな成長を届けるには、せめて三十歳まで生きたいですし。あと六年後に『エンバーミング』は始まる。
その頃には二人とも大きくなります。
しとりは十歳、ひとえは六歳。
フフ、その頃になったらお転婆なしとりも淑やかに育っていますかね。母ちゃん呼びも好きですが、お母様かお母さんのどちらになるのか楽しみです。
「しとり、それは温泉卵ですか?」
「ん!もらった!」
「可愛い子にはおまけよ、おまけ」
にこやかに笑う案内人の後ろにいつの間にか戻ってきていた左之助さんが佇み、そのまま「牛溺泉」と看板の立つ温泉に蹴り落とされた。
見事な牛になって這い出てきた。
『何をするね!』
『おかげで向こう一年は牛のままよ!』
「知るか。人妻の生足見てただろ」
「えっ」
さっとはだけていた着物を戻して、案内人のおじさんを見れば牛の顔のまま顔を真横に逸らした。ここには助兵衛しかいないんですか。
そう文句を言いたくなるものの、しとりとひとえも居るので怒ることはしません。子供に怒りやすい母親だと思われたくない。
「だあう」
「ん!ひーちゃん、ねむい!」
「あらあら、お昼寝ですか?」
ゆっくりとひとえの事を抱っこしたまま揺りかごのように揺らしてあげ、ぷぁーっとアクビをする彼女の背中をトントンと優しく叩いてあげる。
「しとりもおーきくなったする!」
「その時はひとえも大きいかもねえ…」
「ん!まだあかちゃんでいてね!」
それは流石に難しいんじゃないかしら?と思いながら、しとりは私の腕の中で眠り始めたひとえの事を見つめる。ほんの四年前まで、しとりもこうだったんですけど。流石に覚えているわけないですよね。
私の『特典』の一部が変質して伝わっていると分かるのはひとえですが、しとりは左之助さんの強さや優しさを受け継いでいますものね。