案内人の怪しい行動を無事に回避し、私達は普通の旅館に宿泊する事にしました。左之助さんは男湯に向かい、私はしとりとひとえを連れて女湯へ、個魔の方にひとえを預かって貰えるので安心して過ごせました。
やはり一番お姉さんをしていますね。
「この子も私が見えるのか」
「だあう、うっ!」
「ハハハ、私の影は掴めないよ」
「ん!しとりはつかめる!」
ひとえの子守りをしてくれる個魔の方にしとりは抱きつき、一緒に末の妹を可愛がっている。フフ、三人も娘がいると賑やかで良いものです。
「しとりが浮いて見える。酔ってるな…」
「個魔の方ですよ、左之助さん」
「嗚呼、オレだけ見えない長女か」
そう言って不貞腐れる左之助さんにドクトル・バタフライに貰ったひみつ道具の『純真な目薬』を差してあげるために、ポンポンと膝を叩きながら「こっちに来てくださいな、左之助さん」と彼を手招きする。
さっきまで不貞腐れていたのが嘘みたいに私の傍に来てくれた左之助さんは、ゆっくりと仰向けのまま私の太股に頭を預け、私は彼の両の目に目薬を一滴ずつ落とし、溢れた分をハンカチーフで拭き取る。
「どうですか?」
『純真な目薬』。
このひみつ道具は純粋な子供のように物事を見ることが出来るようになるというひみつ道具で、左之助さんの目に浸透した薬は左之助さんに見えなかったものを見えるように変えてくれる。
「その目薬はすげえな。オレにもしとりとひとえと遊んでる姉ちゃんが見える。なんか景に似てるが、マジでオレの知らない間に生んだのか?」
「おばか。でも、そう思えるなら良い事です」
ようやく家族全員が会えるようになりましたから、あとは左之助さんが定期的にこの目薬を使うようになれば問題ない筈でしょう。
ドクトル・バタフライも普通の目薬としても使えると言っていましたから問題なく使えます。もっとも頻度を考えないと危ないのは事実だけれど。
「景、他にもあるのか?」
「ありますけど。危ないものも安全なものも全てドクトルの研究所に保管されていて、私が持っているのは私の身体に必要なものですね」
そう左之助さんに説明しながら初めて見ることの出来た個魔の方に近付いていく彼の背中を見据え、そのまま彼はゆっくりと彼女の近くに座り直した。
「景やしとりを守ってくれて、ありがとうな」
「き、気にしなくて良いよ。私は嬢ちゃんの個魔になるって決めたし、それに父者……あー、左之助と母者の事もひとえのことも好きだからさ」
「そうか。そりゃあ嬉しい限りだ。これからもしとりとひとえの事を姉貴として助けて、困ったときはオレや景を頼ってくれよ。もうオレ達は家族なんだからさ」
「……うん、ありがとう。父者」
左之助さん、かっこいいです……!!!