家族水入らずの温泉旅行を楽しんだ私達を出迎えるように斎藤一と永倉新八の二人が我が家の玄関先に佇んでいて、私はくるりと進行方向を変えるも左之助さんに手を握られ、逃げることは出来ませんでした。
「よう。温泉は楽しかったか?」
「永倉さん、今回の件と温泉は無関係だ」
「オジサンとしては二児の母になった嬢ちゃんを気遣っているつもりなんだけどな。斎藤もたまには小粋なセリフを言ってもバチは当たらんと思うぞ?」
「阿呆が。俺達の目的は糸色の護衛だろう。それとキナ臭い清国の連中が歩き回っている事を伝えに来た、怪しい漢方薬を売っているそうだが、お前達はこの馬鹿みたいに買っていないな?」
そう言って斎藤一に突き出されて出てきた人間に見覚えを感じるものの、誰だったのかが分からない。いえ、頭の中に該当する人はいるんですけど。
明らかに記憶の中の人と年齢が合わない。
「斎藤、ガキを虐めるのはダメだぞ」
「よく見ろ。コイツは鷲塚だ」
「面目無い。妻に盛られた……」
斎藤一と永倉新八の足元で申し訳なさそうに頭を下げる推定三歳か四歳ほどに若返った鷲塚慶一郎。彼の奥さんはススハムなので彼女に聞けば分かりますけど。
「風呂に何を仕込んだのかねえ?」
「景、これってアレだよな?」
ポリポリと頬を引っ掻く永倉新八は足元にいる若返った鷲塚慶一郎の頭を優しく撫でているものの、どうやって治したものかと真剣に悩んでいる。
その様子を見ていた左之助さんの言葉に私は静かに頷きつつ、いつ子供に変わってしまったのかを質問し、凡そ三日前だと聴いて納得する。
私達があの案内人に出会ったのも三日前です。
「先ず、言えるのは子供に変わっているのは清国に存在する呪われた泉の効果です。おそらく鷲塚さんが浴びたのは
「ちなみに景の兄貴は女になる」
「……子供になるだけましか」
「豚や牛、猫なんていうのもありますね」
「ん!わんちゃんなりたい!」
しとりは同じぐらいの背丈になったからか。
鷲塚慶一郎の手を握って笑っているけれど。私の隣に立つ左之助さんが物凄く殺気をばら蒔き、鷲塚慶一郎の事を睨み付けています。
正直、とても怖いです。
「しとり、お母さんと先にお家に入りましょう?」
「ん!はいる!」
「皆さんも立ち話は何ですから」
「そう?じゃあ、お言葉に甘えて」
「相楽、その泉の効果を治す薬はあるか」
「姿のヤツは色々と持っていた筈だ」
確かにお兄様は沢山の即席呪泉郷の素を持っていた記憶はありますけど。流石に、もう持っていない筈です。鎌足お義姉様に全てをプレゼントしていましたし。有っても動物に変わるヤツでしょうか?