某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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悲劇的な泉 急

ススハムの安否を心配しながら私は左之助さんに金平糖を買ってもらい、とっても嬉しそうに紙袋を抱き締めているしとりと手を握り、ひとえの乗った乳母車を左之助さんに預ける。

 

「左之助さん、最近お買い物に良く行きますけど。何かあるんですか?」

 

「ん?嗚呼、嫌な斎藤のヤツが清国の奴らを捕まえるために囮役を押し付けてきたんだよ。お偉いさんはまた景を狙っての行動だと思ってるんだとさ」

 

「成る程、そうだったんですね」

 

しかし、そうなると情報の伝達を盗み聞きしているでしょうね。尤も「糸色景」としての私を探しているのなら見つけることは無理だと思う。

 

今の私は「相楽景」なんです。

 

糸色の名前は日本では有名ですが、相楽と聞けば左之助さんのほうが真っ先に思い浮かぶ。米国(アメリカ)に居るとき、そうして身分を隠していましたし、何より私は左之助さんの妻なのだと自認できる素敵な名字です。

 

「ん!しとりもさがら!」

 

「フフ、そうですね」

 

フンスと胸を張って自慢するしとりの頭を優しく撫でてあげつつ、道を歩いていると私の事を見つめる警察官を見つけた。

 

初めて見る人だ。

 

新しく斎藤一の部下に配属された人でしょうか?

 

いつものように考え込みそうになる意識を切り替えて、私はのんびりと左之助さんやしとり、ひとえと過ごせる日々を満足に楽しめる事を優先する。

 

それにドクトル・バタフライのお願いという面倒事もあり、あと六年後にはイギリスに行かなくては行けません。ああ、時期的に『黒博物館』も同時進行する可能性を考えると頭が痛くなります。

 

いえ、そういうものだと分かっていますし。

 

ただ『エンバーミング』に登場する悪役はコンプレックスを拗らせて周囲を巻き込んでいる相手ですし、そんな人にしとりとひとえを会わせたくない。

 

「親のエゴですねえ…」

 

「どうかしたのか?」

 

「実は娘達が可愛くて悩ましいんです」

 

「オレの女房も可愛いけどなあ?」

 

「また、そうやって」

 

私の心を掻き乱して楽しいんですか?と問いかければ「好きな女が夫婦になっても夢中になってくれるからな」と言われてしまった。

 

本当に左之助さんはズルいです。

 

そう文句を言いたくなる。いつも私ばかり心を惑わされて、これじゃあ私が左之助さんにずっと恋しているみたいじゃないですか。

 

いえ、まあ、否定はしませんけど。

 

「だあう」

 

「ん!ひーちゃんねんね?」

 

「あら、お眠さんですか?」

 

「なら、ゆっくりと帰らねえとな」

 

カラカラと回る乳母車の車輪の音を聴きつつ、くあぅっとアクビをするひとえが眠りやすいように、半分ほど傘を開いてあげる。

 

 

 

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