北海道は季節外れの豪雪によって地面の代わりに純白の壁を作り出し、私としとりはひとえが風邪を引かないように火鉢の近くに座り、左之助さんの撃ち込んだ二重の極みで舞い上がる雪の壁を見つめる。
二重の極みの原理は分かるんです。
もっとも一般成人女性の平均より下、半人前の更に半分程度の身体能力しか持っていない私には最初から二重の極みを使えないのです。しとりは左之助さんに似ているから、もしかしたら使えるかもだけど。
「しとりもやる!」
「まだしとりには無理だから止めようなぁ」
「やー!」
左之助さんの制止を振り切って駆け出したしとりはボフンと雪の壁に突撃し、子供サイズのトンネルを開通させてしまった。
本当に子供のアグレッシブさはすごいわね。
「しとりを連れてきてくれますか?」
ドンと親分にそうお願いすると二匹は火鉢の傍を離れ、しとりの作ったトンネルの中を進んでいき、二匹の姿が見てなくなって直ぐに左之助さんの頭より高い位置にしとりが現れ、また雪の中に戻ってしまう。
なんだか大変なことになりましたね。
こういうことも起こりやすいのは想像していましたが、ひとえを一人にすることは出来ませんから私はお手伝いも出来ません。
いつか貴女もお姉ちゃんのように雪の壁に走っていったり妖怪や幽霊、変態さんに気に入られて家まで連れて帰ってきちゃうようになるのかな?
「景、しとりを怒ってくれ」
「怒れと言われても……」
しとりは楽しく遊んでいるだけで悪いことはしていないのに叱り付けるのは可愛そうですし、いきなり叱るのはダメだと思う。
でも、確かに危ないですね。
「しとり、来なさい」
「ん!」
ボフンと雪の壁を突き破って出てきたしとりを左之助さんが掴まえて、パタパタと可愛らしく手足を動かす彼女の身体を優しく抱き締めてあげる。
ほんのちょっと雪に埋もれただけで、こんなに冷えてしまって後で手袋を繕ってあげないとしとりの小さくて可愛いお手手が霜焼けをしてしまいます。
「お湯を沸かすから火鉢の傍に居てね?」
「ん!ん!」
「最近、オレの言うことはきかないのになぁ?」
「フフ、そういうお年頃なんですよ」
そう言って私は核鉄を水を張った浴槽に落とした瞬間、瞬間的に熱々の湯船に変わる謎の原理を有効的に活用している。ちょっと使い方に差異はあるけど。
これもまた錬金術のはずです。
「左之助さんもご一緒に」
「そうだな。オレも入るか」
しとりの事を左之助さんに頼み、私は居間の火鉢の傍でスヤスヤと眠っているひとえの近くに座り、彼女のお腹をポンポンと軽く優しく撫でる。