ドクトル・バタフライの研究所にやって来た私は診察を受け、お医者さんカバンを使って調べても異常は見つからず、唯一分かったのは私の身体は『特典』による過剰負荷に耐える分の強さは無い。
「君の記憶と直結した『特典』に抑圧・制御を掛けているが、一時的にその術式を解除する。かなり君に負担を与えるが、本当に大丈夫なのかね?」
「問題ないです。十九年間、その状態で過ごしていたんですよ?今更解除したって大丈夫です。ただ、副作用と言うべき能力も問題ですよね」
「『未来予測』と『鑑定能力』だね」
「えぇ、おそらく『特典』の制御を解除した瞬間に自動的に起こると思います」
そう言って私は手術着に着替えて寝台に寝転ぶ前に眼鏡をドクトル・バタフライに預け、ボヤける視界の中で動く彼の人影を見つめ、ゆっくりと目を閉じる。
───すると。私の身体を包み込むように熱を感じ、身体の中に存在していた扉を解錠する感覚に思わず、目を開いてしまったその時、私は視界に映る物質や物体の名称をダイレクトに読み取ってしまう。
「あッ、ぎィ゛ッ?!」
見える。視える。診える。観える。看える。
膨大な情報を受け止める目は痛み、ドロリとした液体が目尻を伝い、頬を流れ、寝台に落ちる。───ッ、落ち着いて十九年も一緒に過ごしていた能力だ。
「ふうっ、ふぅッ…!」
「────術式終了。よくぞ耐えた」
「……と、とんでもなく痛いです!」
「視界はどうかね?」
ハンカチーフで目尻の血を拭って眼鏡を掛け、ドクトル・バタフライの事を見る。なにやら特撮ヒーローのステータス画面みたいなものが見える。
え、また変化したの?
……いえ、分かりやすく教えているだけですね。
私が意識を切り替えれば視界に映るのは肉体スペックを数値化したものばかり。まあ、かなりグレードアップしているように感じますけど。
「他に何かあるかね?」
「これは『料理のスキル』と同期しているんでしょうね。視界に映るものに捌き方を教える切り取り線や角度、除去方法も見えてますよ」
「ふむ、擬似的な『直死の魔眼』みたいなものか」
「私の教えた話は覚えているんですね」
「友人の話題は記憶しているよ」
そう言って笑うドクトル・バタフライに苦笑を浮かべつつ、意識を切り替えると『未来予測』に視覚情報は変化し、非常に面倒臭い事になっています。
「……これで三度目の制御を施す事に成功したが、私の知性でもこれ以上の制御を与えることは不可能だ。もしも次に解けたら……」
それは前にも聴きましたね。