ひとえを乳母車に乗せて、しとりと手を繋いで一緒にお散歩していると湯の川沿いでチラシを片手に項垂れる珊瑚やイソギンチャクを彷彿とさせる風貌、黄色い袴を履いた人外の存在に思わず、私は目を見開く。
外道衆の率いる雑兵ナナシが、二月ほど前に我が家にやって来た牙鬼軍団の足軽ヒトカラゲの励ましを受けつつ、更に二人の目の前には全身青色に歪んだ顔を散りばめた妖怪忍者ドロドロまでも足湯に浸かっていた。
「ん!かげちゃん!!」
「ジッパ!ジッ!」
しとりの呼び掛けに気がついたヒトカラゲは大きく手を振り回して、しとりの事を気遣ってくれる。何気に良い妖怪なのかも知れませんね。
「ん!しとりはさがら、しとり!」
「ナ!ナ!」
「んとね、なっちゃん!」
「ナー!」
他人と触れ合うことが苦手な私の娘とは思えないほど天真爛漫且つ純粋無垢な優しさの塊のしとりと和風モチーフ戦隊に登場する戦闘員達の会話を聴きつつ、私は足湯の傍に腰掛けてひとえの子守りを再開する。
子育て中のお手伝いは助かります。
ふと私の抱っこするひとえにドロドロが近付いてきて、静かにひとえの事を見つめる。そういえばドロドロはそれなりに知性を持つ戦闘員でしたね。
「人間の赤子、かわいい」
「フフ、ありがとう」
「だあう」
「おっ?!さ、触ったら危ない!」
ヒラヒラと手を伸ばすひとえにビックリして後ろに飛び退くドロドロに気付いたナナシとヒトカラゲもまた、ひとえの存在に驚いている。
「しとり、おねえちゃん!」
「ナ!ナ!ナー!」
「ゾーヒョー!」
「愛い」
フンスと胸を張って自慢するしとりに三人は拍手し、ひとえも三人を真似るようにパチパチと手を叩いていたその時、全身を貫く殺気と、異様な気配を発する刀の音色に耳を傾けてしまう。
「見つけたぞ。空の上で火の侍を呼んだ女だな」
……私って、やっぱり不幸に巻き込まれやすい体質なのかも知れない。どうして、こうも知り合いたくない人達に出会ってしまうのでしょうか。
尤も向こう側にとって好都合すぎる展開だ。
「母ちゃんいじめちゃめっ!!」
「……子供ながらに母親を守るか。良い娘だ」
そう言うと彼はヒトカラゲやナナシを押し退け、私の真横に腰掛けてきた。ひとえを乳母車に乗せず、抱っこしたまましとりを連れて離れる。
彼は不満そうに近付こうとするので「私は人妻ですので近付かないで欲しいです。お友達や主人に勘違いされたくありませるので」と素直に伝える。
こういう相手は隠すより素直に伝えるべきです。