某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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ドクトル・バタフライ視点になります。





自覚無き異能 序

私の正体を知り、数少ない異性の友たる糸色景は他の転生者と比較してみると極めて特異な存在だろう。神々の定めた【物語に転生者は一人だけ】という『原則』に適さず、二つの【物語】を繋いでいる稀有な女性だ。

 

約二回ほど彼女の血筋は私達の生きる明治時代へと到来し、人の世を守るために戦う日々を過ごしている。現段階、この明治時代にやって来て判明している彼女の血筋は『糸色賛(いとしき ほまれ)』と『武藤カズキ』の二人だけ────。

 

その『武藤カズキ』は私の愛読書『武装錬金』の主人公であり、原作に糸色景の名前や存在は登場していないにも関わらず、彼女は未来の世界に数多の影響を及ぼす存在に生まれ変わっていた。

 

これは、実は興味深い現象だ。

 

また分かっている彼女の特性として挙がるのは『よく病む性質の男を惹き付けやすい』という物だろう。彼女の夫である相楽左之助もその性質を持っている。

 

彼は過去に尊敬し敬愛する男の死を体験し、糸色景と関わり始めて都度三回、四回ほど誘拐被害に遭遇して己の無力感に苛まれていた。が、現在は愛妻家にして二児の父親としての外面を被っている。

 

ああいう手合いは一度箍が外れてしまえば欲望に忠実なケダモノに成り下がる。ほんの偶然だったが、酒の席で私は彼の欲望を聴いてしまった。

 

「景の手足を斬って閉じ込めたい」や「首輪を嵌めて動けない様にしたい」や「何も出来ない様に、全部オレが面倒を見ていたい」等々。

 

凡そ愛妻家の語る言葉ではなかったね。

 

「ドクトル、おはようございます」

 

「ああ、おはよう。今日は血色も良くて動きやすい格好を心掛けているようだが、左之助君達と一緒にどこかにお出掛けするのかね?」

 

「いえ、そういうわけではないんですけど」

 

────嗚呼、まただ、またやっている。

 

糸色景にお願い事や頼み事を頼めない。いや、正確には頼めるが、彼女はあまりにも自己肯定感が低く、自分の価値を低く思っている。

 

まあ、そういう感じの性格なのだ。

 

「楽しんで来たまえよ」

 

「そうします」

 

そう言うと彼女は穏やかに微笑み、私は家族の元に帰っていく糸色景の後ろ姿を静かに眺める。人間の悪意を受けて尚、彼女は真っ直ぐ歩んでいる。

 

やはり彼女も芯の通った女性だ。

 

「ドクトル、どうかしたのか?」

 

「信二君、君はさっさと婚姻を承諾して東京に帰りなさい。不破の血を濃く継いでいる君が子供を儲けなければ面倒になるだろう?」

 

「へいへい」

 

私の言葉に聞く耳を持たない彼に溜め息を吐く。おそらく陸奥より強いであろう彼が、これでは何とも言えないこともある。

 

 

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