「見つけたわよ、景さん!」
しとりとひとえを連れて左之助さんの仕事場に向かっていたその時、私の名前を叫ぶ声にビクリと身体を強張らせて、恐る恐る後ろに振り返ると巻町さんがいた。
その傍らには四乃森蒼紫も居て、何やら大荷物を抱えている。家財道具は無いので引っ越しというわけではないんでしょうが、何故ここに?
「巻町さん、お久し振りです」
「えぇ、久し振りね。あと今の私は四乃森よ!」
「フフ、四乃森さんもお久し振りです」
「嗚呼、久しいな。糸色」
私達は軽く会釈を交わして荷物を抱えた四乃森蒼紫と巻町さん……ではなく、今は長年の初恋を成就させることに成功した四乃森操さんと歩く。
やっぱり、四乃森蒼紫は左之助さんよりも背丈は高くいつも以上に見上げてしまう。しとりも初めて見る彼にビックリしながらも、キラキラとした眼差しを向け、よじ登りたい欲求をウズウズとさせている。
フフ、それはちゃんと許可を得ましょうね?
しとりと手を繋いで一緒に歩きつつ、みんなと一緒に荷物を運んでいた左之助さんが私達に気づいて振り返ったその時、物凄い勢いで四乃森蒼紫に一足飛びで飛び蹴りを放っていた。
「ちょっと、何すんのよ!!」
「……あ、悪りぃ…四乃森が景の近くにいたもんで…」
「操、今のは仕方ない事だ。一度俺は糸色の事をコイツの目の前で拐った事がある。何より未だに決着をつけずに過ごしているからな」
いえ、あれは般若でしたけど。
そう言おうかと思ったものの、二人とも同じ勘違いをしてしまっているらしく苦笑しながら操さんを連れて、運び終わった木箱に腰掛け、二人の睨み合いを静かに眺めることにしました。
「ね、ねえ、その子達が景さんの子供?」
「はい。長女のしとりと次女のひとえです」
「ん!はじめまして、しとり!」
「か、かわいいわね…」
モチモチとしたしとりの頬っぺたを両手で挟むように触りながら撫でる操さんに「むやあっ!」と叫び、ケラケラと楽しそうにしとりは笑顔になる。
「…ね、ねえ、景さん……」
「はい、なんですか?」
「や、やっぱり、あれって、その…」
あれ?
「やっぱり、痛いの?」
「あ、ああ、えと……まあ、はい……」
子供の前で何を言っているのだろうかと自分の言葉に困惑しながらも操さんの言葉を肯定して、チラリと額を叩きつけ合い、一歩も引かずに頭突きで勝負を開始した夫達に更に困惑してしまった。
一体、何をやっているんですか?私の真剣な悩みを変な喧嘩で止めるのはどうかと思うのですが、二人のおかげで変なことを言わずに済みました。