粛々と穏やかな日々を過ごす傍らで、何とも騒々しく楽しく笑えるのは良いことです。まあ、操さんも添い遂げることが出来ると喜んでいますし、結果オーライということなのだろう。
ドクトル・バタフライは未だに『ヒーローマシン』に拘っているらしく、まだ幼児化したまま戻っていないススハム曰く「入れないなら連れてくれば良いんだ」と言い残して、一人だけでひみつ道具に入ろうとしていたそうです。
不安だ。
ものすごく不安になる。
「なあ、景」
「なんですか?」
「三人目がほしい」
「ど、ド直球ですね…」
ジッと私を見つめる左之助さんの言葉に戸惑いながら、お腹を軽く擦ってしまう。ひとえを産むとき、私は二度も死んでいた。
きっと次は帰ってこれません。
「ごめんなさい。流石に体力が…」
「いや、オレも悪かった。確かに産後のお前にまた負担を掛けるのはダメだな。せめてしとりが十歳か其処らになるまで我慢しねえとな」
そうなると私は二十四歳ですね。せめて左之助さんと一緒に三十歳にはなりたいです。まあ、ドクトル・バタフライが手助けしてくれるでしょう。
……ちょっと頼りすぎかな?
少しくらいお返しした方が良いですよね。
「左之助さん、もしものお話なんですが『もしも私と出会わない左之助さん』に会えるなら、どういう話をしてみたいですか?」
「三下り半なんざ許さねえぞ」
「ふぎっ、そ、そうじゃなくて」
むにゅうっと右手で顔を掴まれ、三白眼の怖い目が私を見下ろして見つめる事にビックリしながらも「ドクトル・バタフライがそういう世界を見ることの出来る発明品を作っているのだ」と伝える。
「また、あのオッサンかよ。けど、そうだな。もしもの話だってんならオレは喧嘩屋のまま明治政府に楯突いて、殺されてるんじゃねえのか?」
「あ、あはは…」
それは、わりと原作に近い世界線ですね。
しかし、左之助さんと出会わなかったら私も一人で死んでいたのか、あるいは誰かに依存して壊れたように世界を狂わせていたかも知れませんね。
まあ、それは今もですけど。
「だから、オレはお前に出会えて良かった」
「フフ、私も一緒です。貴方に出会えなかったら私はどうなってたのか分かりませんから、ひょっとしたら別の人のぷぎゅっ」
「死んでも離さねえから安心しろ。どうせ、オレは地獄行きだろう。が、お前が天国に居たって地獄の底までお前を連れ去ってやるからよ」
「……なんですか、それ」
彼の言葉に苦笑いを浮かべながら腰を掴まれ、隣から彼の胡座を掻く足の間に場所を移され、のんびりと穏やかな時間を過ごす。