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高荷の傷薬で止血は出来ているが、走るだけで二重の極みを受けた身体が軋み、痛みに目が眩み、僅かに視界がボヤける。クソ、まだ十本刀は七人残ってるってえのに、意識が飛びそうになりやがる。
「第二の間、此処にいるヤツは強いわよ。第一の間でも聞いたけれど、此処を開けたら引き返すことは出来なくなるわ」
「御託は良い。さっさと開けろ」
そう言うと斎藤は観音開きの扉を蹴破り、今更だが駒形由美って名前の姉ちゃんの隣を平然と素通りして部屋に入っていき、夥しい量の目玉の模様の部屋の真ん中に座して待つ甲羅を背負った目隠しの男が視界に映り込む。
「彼は十本刀の一人。『盲剣』の宇水、少なくとも和尚のように優しくも無ければ志々雄様に忠誠を誓っている訳でもないわ」
独特の武器だ。
槍のようにも見えるが長さは日本刀と同等、少し長い程度の柄だが石突部分は鉄球拵えになっている。鎖鎌や分銅使いって訳じゃなさそうだが、どういう戦い方をするのか。全く分からない相手なのは確かだ。
「……なんだ。安慈の奴は誰も殺せなかった様だな。やはり俺が真っ先に出向いていたあのとき、皆殺しにしておけば簡単に事は済んでいた物を」
「左之は休んでいるでござる。ここは拙者が」
「お前は志々雄と戦うんだろうが!」
オレの前に一歩踏み出そうとする剣心の襟首を掴み、斎藤と蒼紫に視線を向ける。既に二人の意見も合致していたらしく、煙草を咥えていた斎藤が一歩前に出る。
「成る程、俺の相手はお前か斎藤一。しかし、随分と古臭い煙草を吸っている様だが、警官ってのは儲かっていないみたいだな」
「阿呆。コイツは俺の趣味だ」
そう言うと斎藤は煙草の煙を吐き、まだ火の付いている紙巻き煙草を人差し指で爪弾き、目隠しの男に向かって投げつけ、そのまま額か顔の何処かにぶつかると思っていた。───だが、煙草は指で挟み、受け止めた。
「やはり、外来品の煙草は不味い」
ゆっくりと吸い口に宇水は口を付け、煙を吐く。
「ホウ。強ち心眼というのもハッタリでは無さそうだな。緋村、此処に留まるのは構わんが、一対一の決闘に横槍を入れる事は赦さんぞ」
「……嗚呼、分かっている。だが、拙者の目の前で起こる殺しを見過ごすつもりはない」
オレと蒼紫は静かに二人の会話を見守りながら姉ちゃんを連れて部屋の端に移動し、やがて斎藤との話を終えた剣心もオレ達のところに戻り、斎藤と宇水の二人の決闘を見守ることに徹する。
「駒形、合図はお前に任せる」
「好きにしろ」
刀の切っ先を宇水に向けた牙突の構えを取る斎藤。対して、宇水は槍と鉄球の合体した独特な武器を握り、弥彦や薫のように正眼に構える。
「二人とも良いわね……すう、始めっ!!」
その掛け声を合図に斎藤は剣心にも劣らねえ突進と同時に真っ直ぐ相手の身体を貫く牙突を繰り出す。
────が。しかし、斎藤の放った牙突の刃先が鉄球を捉えたと思った瞬間、アイツの身体が僅かに傾き、宇水の槍が逆に斎藤の頬を掠めた。