私は『ヒーローマシン』を通って原作軸(正確には『るろうに剣心』を詳しく覚えていないススハムや不破信二のために描いた物)の世界に入る。
知っているのに、知らない人ばかりだ。
向こうも私を初めて見るように目を細め、私の知っている左之助さんは左之助さんじゃなくて、ただのひみつ道具に作り出された空想だ。
それは分かっているのに心が寒くて、スースーと胸の奥にぽっかりと穴が開いてしまったように苦しくて辛くて寂しい気持ちになってしまう。
「あ、あの…!」
ゆっくりと『悪一文字』を背負った背中に話し掛けたその時、憎しみの混ざった目が私を射貫く。静かに私を見下ろす彼の目は敵を見る目だ。
「なんだよ、話がねえなら行くぞ」
「ッ、此処で貴方以外に背が高くて赤い鉢巻きを巻いた人を見ませんでしたか!」
「ソイツに会って、どうする気だ」
「…私の、大切な人なんです…」
そう私は相楽左之助に伝えると小さな舌打ちをしながら「着いてこい。女独りで東京は歩けねえだろ」と言ってくれたものの、ズカズカと彼は歩いていく。
いつも私の歩幅に合わせてくれる左之助さんと違い、相楽左之助は私の事を待ってくれず、カラコロと草履が音を立てるように小走りになり、ふらつき、人混みではぐれないように動く度に「はあっ…ッ、はあっ…けほっ……!」と呼吸が乱れ、ズキズキと胸が痛み始める。
「まっ、ゲホッ、ゲホッ!ゴホッ…」
「待って」と相楽左之助にお願いしようとした瞬間、ふらつきながら地面にへたり込みながら口許を押さえて、ポタポタと少し濁った血が口許を隠す手のひらから零れて、地面に滲んでいる。
ああ、ほんとうに最悪です。
ドクトル・バタフライに貰っていたお薬を忘れているし、左之んも何処に居るのかも分からない。早く、あなたに会いたいのに会えないのは寂しいです。
ザワザワと騒々しくて私を遠巻きに見つめる視線の数と恐さに身体が震えてしまう。寒い、寂しい、怖い、誰か私を助けて……。
「オイ。おぶされ」
「げほっ、でも…」
「良いから乗れ」
そう言われて渋々と相楽左之助の背中に身体を預け、行き先が変わったことに戸惑う。この方向はごろつき長屋で、左之助さんが離れた場所だ。
もしかしたら、そこに居るかも知れないという一縷の期待を抱きながら相楽左之助の背中に背負われたまま私は長屋の前まで来たものの、やっぱり左之助さんは居なくて悲しい気持ちになる。
「(左之助さん、無事で居てくださいね)」
私が絶対に迎えに行きますから。