某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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研ぎ澄ます牙 破

斎藤は頬を伝う血を拭うこともせず、切っ先を宇水に向けて構える。やや上段に構えた牙突の構えは剣心と戦っていたときに「正真正銘の牙突」と称していた構えに酷似し、威圧感が半端じゃねえ。

 

「ククク、牙突を防がれて怒ったか?」

 

「下らん。俺の牙突に貫けぬ物は無い…!」

 

鋭い踏み込みと共に腰を捻り、最短距離を詰めて放たれた斎藤の平刺突は宇水の胴着の脇を裂き、手首の返しで軌道を変え、横薙ぎによる追撃が目玉模様の袈裟を横薙ぎに斬り、胸部の薄皮を切り裂く。

 

「咄嗟に後ろに退き、致命傷を避けたか」

 

「斎藤の牙突をこうも避けるとは……」

 

蒼紫と剣心の言葉が聴こえていたのか。ギロリと此方を睨み付け、余計な事を言うなという視線を送ってくる斎藤に剣心は苦笑を浮かべ、姉ちゃんは斎藤の眼力にビビって蒼紫の後ろに隠れている。

 

しかし、直ぐに斎藤は宇水に向かって構え直す。

 

「まだ、ご自慢の牙突に拘るつもりか。俺にとって牙突など只の刺突……いい加減に牙突は通じないと理解したらどうだ」

 

「もう一度言うが、御託等どうでも良い。俺の牙突に貫けぬ物は無い。この言葉は絶対だ」

 

その言葉の通り、斎藤は牙突の構えを取る。あくまで牙突に拘る斎藤に宇水は失笑し、背中に背負っていた亀甲を左手に構え、盾のように構える。

 

どちらも致命傷を負っている訳じゃないが、牙突の通じない相手に牙突に拘る斎藤は圧倒的に不利だ。───だが、自分の切り札に拘るのは嫌いじゃない。

 

オレは手の中にある斬馬刀の欠片を握り締め、斎藤と宇水の戦いに意識を集中させる。どっちも剣心と同等の剣客の戦いだ、一瞬たりとも見逃す訳にはいかねえ。

 

「ならば牙突に縋りついて死ね!!」

 

宇水は槍と鉄球を巧みに振るい、高速の乱撃を斎藤に向かって放つ。ただの乱れ打ちじゃねえ、亀甲の目隠しを加えた事で視界を遮断し、武器の出所を隠してやがる!

 

「死ぬのは貴様だッ!!」

 

全身の筋肉の軋む音が響き、剣心と戦っていたときには一度も使っていなかった見たことのない、強烈な片手平刺突が亀甲を貫き、砕き、亀甲を構えていた宇水の左腕が弾け飛び、奴の身体が壁に激突した。

 

「なッ…なんだ…今のは…牙突、か…?!」

 

「阿呆が。自分の言葉を忘れたのか。俺の『牙突』は只の『刺突』だとな……本来は抜刀斎と決着をつけるときのために隠しておいたとっておきだが、貴様に『牙突・零式』をくれてやる」

 

「……クッ……クク…そうか、伝説の人斬り抜刀斎に使う筈だった技か…!…」

 

そう言って斎藤は片腕を無くした宇水を見下ろし、紙巻き煙草の先に火を点け、ゆっくりと煙を吐き、そのまま煙草の箱を宇水の足元に投げる。

 

「貴様の要望通りに殺していないぞ」

 

「ああ、紙一重の激闘だったのは理解している」

 

剣心は苦虫を噛み潰したような顔で斎藤の言葉に頷きながら宇水に近付き、傷の手当てをしようとした瞬間、鋭い突きが剣心の前髪を掠める。

 

「…ハアッ…寄るな…傷の手当てなど一人で十分だ……斎藤一、今回は貴様の勝ちだ……だがッ……次に勝つのは、俺だ……!…」

 

ズルズルと壁を伝ってオレ達の通ってきた通路を歩いていく宇水の背中をオレ達は黙って見据える。アイツが志々雄真実に与している理由は知らねえが、少なくとも剣客としては強いのは間違いなかった。

 

 

 

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