今後の出来事に備えて東京に帰宅し、しとりとひとえの事をお友達に紹介してまわり、左之助さんに抱っこしてもらっているひとえは眠そうにアクビをする。
しとりも今年で六歳になりますからね。淑やかに育ってきてお母さんは嬉しいです。ただ、昔のように遊び回っているときもあるので変わったわけではない。
ほんの少しでも安心すると家の外に遊びに行っていたりする。最近はお昼頃にお結びを握って、剣路君にお弁当を届けている。
「けんちゃん、美味しい?」
「うん、美味しいよ」
「ん!」
神谷活心流道場の壁際に座って笑い合う小さな子供達の事を微笑ましく思いつつ、私は穏やかな日々を過ごせる事を本当に嬉しく思う。
「景さん、暫くは東京にいるのよね?」
「はい。しとりが十歳になるまで居ます」
「それは良いでござるな。剣路もしとり殿が居ると身を引き締め、稽古や鍛練にいつも以上に励んでいるし。なにより拙者の言うことを聞いてくれる」
「それは剣心の頼り無さのせいだろう。弥彦も素直に言っていいんだぞ?」
「オレに押し付けるなよ。けど、確かに剣路の半端な気持ちは消えたな。惚れた女のために頑張るのは若人の特権だと思うぜ」
ようやく集まることが出来たみんなの事を眺めながら私は神谷活心流剣術ではなく神谷活心流剣道と名前を変えた道場の中を見る。
二十人近く増えた門下生。月々の生活費やガス代を考えると中々に厳しい月収なのに、ここの人達は優しさを分け合って平和に暮らしている。
とても良いことです。
「左之助さん、今夜は赤べこ行きましょうか?」
「妙にも紹介しねえとな」
「んむぇ……」
ひとえは眠たげに目元を擦ろうとする手を止めて、ハンカチーフで目元を優しく払ってあげ、左之助さんと抱っこする相手を交代してあげる。
「糸色の姉ちゃんは相変わらずか?」
「まあ、そうですね。いつまでも左之助さんに甘えていたいんですが、母なので威厳を出そうとしているんですが甘やかし過ぎているのでしょうか?」
「剣心も悩んでたわね、それ」
「左之のように拙者は威圧感がないでござるから仕方無いのかも知れぬが、やはり父として威厳を保っていたいものでざるよ」
そう言って笑う緋村剣心に「まあ、あの状態の剣心なら威圧感はあるな」と呟く左之助さんに私も同意する。それに左之助さんは優しいお父さんですから、威圧感なんて必要ないんです。
うちの姉妹は仲良しの良い子なのです。
たまに悪いこともしますけど。それもまた子供なので仕方無いことですし、自由に物事を確かめるのは良いことですよね!