西郷四郎の活躍に賑わう町中を歩いていると廃刀令のご時世に刀を腰に佩いている壮年の男の人と彼に似た顔立ちの少年と擦れ違う。
「ん?おお、糸色か」
「やっぱり陸奥さんだったんですね。また、強い相手を探して諸国巡りですか?」
「嗚呼、少し野暮用でな」
「オヤジ、知り合いか?」
「まあな。北海道に行ったときにお前も会っているが、覚えていないのか」
陸奥出海はそう言って私よりもすっかり背丈の大きく伸びて成長した少年、陸奥天兵君に問いかけると「知らん。が、北海道でかは覚えていないが花みたいに綺麗な笑顔は覚えている」と呟いた。
あらあら、なんだか大変な事になってきたわね。
剣路君と天兵君の二人と親しくしているのは、しとりだけですけど。一歩リードしているとしたら剣路君かしら?と首を傾げながら考える。
「母様、お財布忘れてたよ?」
「え?ああ、ごめんね。ありがとう、しとり」
「ん、もっと褒めて良いよ」
嬉しそうに笑うしとりの頭を優しく撫でていると彼女も視線に気付いたのか。天兵君の方に顔を向け、こてんと可愛らしく小首を傾げる。
剣路君の事は覚えていたけど。
流石に数日だけのお友達だった天兵君の事は忘れてしまっているのかも知れないですね。そう思いながら、しとりのことを見下ろす。
「あ、てんちゃんだ!」
「ひさしぶり、だな」
「……糸色、お前の娘はあれだな。いわゆる魔性の女ってやつじゃねえよな?」
「失礼ですね。うちの娘は天使です」
「お前もかよ」
私の言葉に呆れたように呟く陸奥出海に文句を言いつつ、あんなに可愛い女の子にドキドキしないほうが間違っていると私は断言する。
お世辞や依怙贔屓ではなく本心です。私の娘達はどんなものよりもなによりも可愛いくて素敵なんです。まあ、子供は等しく可愛いですけど。
「てんちゃん、どうしたの?」
「……いや、なんでもない」
無警戒・無防備に近づくしとりに戸惑う天兵君。北海道でも近所の男の子や女の子に似たような行動をしていたから、それはもう愛されていました。
「あ、そうでした。しとり、お母さんはこれから買い物に行かないといけないので二人をお家まで連れていってくれる?」
「ん!」
「いや、いいのか?」
「陸奥さんは悪い人じゃないので」
そうしとりにお願い事をして、家の中で左之助さんに張り付いているであろうひとえもご紹介してもらえると助かります。
賢くて可愛いしとりなら問題ないですね。
しかし、大人数になるとお買い物が大変な事になるんですよね。無事に生きて帰れるかな…。