「景、いつまでコイツがいるんだ?」
「まあ、気にするなよ」
「お前が言うな!」
私が台所で夕御飯の洗い物を拭き終えて、居間に戻るとまだ言い争う左之助さんと陸奥出海の会話を聴きつつ、不思議そうに小首を傾げるしとりを挟んで睨み合う剣路君と天兵君の二人にクスクスと笑ってしまう。
ひとえはお姉ちゃんを取られたくないから抱き付いているので問題ないですけど。やっぱり、しとりも私の巻き込まれやすい体質を受け継いでいるようです。
「ひーのねーしゃま!」
「ん!ひーちゃん、すき!」
「んえへぇ…♪︎」
しとりにワシャワシャと頭を撫でて貰えて嬉しそうにするひとえを見つめる男の子達は何とも言えない表情を浮かべつつ、父親の左之助さん達は口論を止めて、軽くお酒を飲み始めている。
それにしても、だ。楯敷ツカサは二年間は何も行動を起こさず、私もひとえのおかげで心肺の負担は少しだけ和らいでいる。未来の何処か重要な場面に渡っているのでしょうが。
私には何も出来ない。
何かしら彼の求める力はあるのだろうけど。私は『物語を繋げる力』を与えられ、楯敷ツカサは『世界を渡る力』を掴み取った。
「……どうして、彼はラスボスになりたいのかな」
「らす、なんだ?」
「ああ、いえ、ただの独り言です」
私の呟きを聴いていた左之助さんが此方を向き、ボスンと寝転ぶように頭を私の太股に乗せて、にんまりと笑って私の髪の毛を弄り始める。
そういうのは二人きりのときにしてほし……コホン、そういうのは子供の見ていないときにですね、ええとですね。兎に角、カッコいいんですから扇情的な事をするのは妻としてダメだと思うんです。
「オイオイ。さっきまでの威勢はどうしたんだよ」
「うるせぇーっ、今は女房の相手で忙しいんだ。喧嘩してえなら隣家の剣心んとこで殴り合ってこい」
「剣心。そうか、隣は飛天の家か!」
そう言うと陸奥出海は嬉しそうに中庭に飛び出し、塀を飛び越えて三軒隣に建つ神谷道場へと侵入していき、天兵君はそのまま置き去りです。
まあ、問題ないんでしょうけど。
やっぱり気になってしまう。
「とーしゃま、おねむ?」
「ん?ああ、いや、膝枕を堪能してるだけだ」
「ひーもする!」
「ゔぇっ」
ドスンと左之助さんのお腹に飛び乗ったひとえの顔は笑顔であり、彼女は自分のやっていることに無自覚のまま左之助さんのお腹の上に乗っている。
ものすごく羨ましいですけど。私は母親なので愛娘に嫉妬したりなんてしません。ただただすごく羨ましく思うだけです。