某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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糸色さん視点に戻ります。


研ぎ澄ます牙 急

今頃、左之助さん達は戦っている頃だろうかと考えながら「葵屋」の店先で起こっている激闘を私は見守る事しか出来ない。何より志々雄真実一派の目的は「国盗り」に新しく「糸色景の捕獲」という物も加わり、もう逃げることは出来ない状況だ。

 

百五十人を越える志々雄真実一派の戦闘員と戦う御庭番衆の方々は私の誘拐を阻止するため、拡散して戦うことも出来ず、個々の特技を上手く使えずにいる。

 

「ぐふっ♥」

 

「…………」

 

そして、私の目の前に立つ肥満体型の男……いや、肥満体型の男の人の死体を改造して作った屍人形の着ぐるみ「夷腕坊」を身に付けた機巧芸術家(からくりアルティスト)」の外印は私に意識を集中させている。

 

「糸色、さっさと逃げろ!」

 

「……い、いいえ、逃げません!みんなが私を守るために戦ってくれているのに、私だけが逃げるなんて事は絶対にしません。私は、東京一強い人の妻です!」

 

明神君の叫び声に自分を鼓舞するように応える。確かに怖くて今すぐ逃げ出してしまいたい……けれど。ここで逃げ出したら、きっと私は一生大事な出来事から逃げ続けることになる。

 

それだけは、絶対に嫌だ。

 

「なら、私が連れてっちゃうわね!」

 

「へ?いや、それとこれとは話が!?」

 

「問答無用、志々雄様が待ってるわよ!」

 

本条鎌足は大鎌の柄を棒高跳びの様に使い、御庭番衆の人達の攻撃を受け続ける夷腕坊の身体を飛び越え、神谷さんと巻町さんを放置して、私の目の前に着地した。

 

「させるかァ!」

 

「糸色さんは左之助のよ!!」

 

そのまま私の身体を掴もうとした瞬間、私と本条鎌足の間に巻町さんが飛び蹴りと共に割り込み、続くように神谷さんが木刀を横薙ぎに振るい、無理やり本条鎌足を間合いの外に押し出す。

 

ただ、そんな大々的に言わなくても。ま、まあ、私も左之助さんのお嫁さんだって大声で言われるのは悪い気分じゃないですけど。

 

流石に、こんな所で叫ばれるのは恥ずかしいわ。

 

「……ほんっと、危ないわね。鍛えてすらいないひ弱な糸色ちゃんにさっきの蹴りが当たったら怪我じゃ済まなかったんじゃないの?」

 

「なッ……失礼な事言わないでよ!ちゃんと糸色さんに当てないように蹴ったわよ、多分!!」

 

「えっ」

 

「操ちゃん、流石にそれは……」

 

多分、巻町さんを煽って判断力を低下させようと考えていた本条鎌足の言葉にまんまと乗ってしまった彼女の言い放った「多分」という曖昧な言葉に思わず、私はショックを受け、神谷さんも苦笑いを向けてくる。

 

 

 

 

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