騒然とした組み合いを眺めながら私は西郷四郎の投げる姿を描く最中、僅かに彼の視線に違和感を感じる。私と誰かを重ねているように思えるけれど。
私に似ている人なんているのでしょうか。そう思いながら下書きを終えて、「もう姿勢を崩しても良いですよ」と告げたその時、綺麗な一本背負いが相手の身体を畳に叩き落として組みを解いた。
「ん!どしーんって、なったね」
「ねーしゃま、どしん!」
キャッキャッと興奮する姉妹を宥めつつ、静かに残心に専念する西郷四郎に「長時間、すみません」と謝り、下書きの絵を見せようと近づいた刹那、私の身体は半回転して畳に落ちる前に左之助さんがキャッチしてくれた。
「テメェ、いきなり何しやがる!」
「正体を現せ。糸色姿、お前なら今の投げは容易く受けきっていた筈だ。よもや女人の真似事で私を騙せると本気で思っているのか」
「……あの、糸色姿は私の二つ上の実兄です。私は正真正銘生まれたときから女の糸色景なので……」
ドクンドクンと早鐘を打つ心臓を抑えるように左胸を押さえつつ、そう伝えると怪訝そうに西郷四郎は私を見たかと思えば顔色を悪くし、何度も頭を下げて謝罪してくれたものの、何とも言えない空気です。
ただ、姿お兄様と因縁を持っているのか。あるいは、姿お兄様の好奇心を擽ってしまい、彼は面倒事に巻き込まれてしまった経験があるのでしょうね。
それにしても、姿お兄様も悪い人です。
私より年下の男の子をからかって怒らせるなんて何をしたんですか。あんな力任せに人を投げ倒すような行為に及ぶなんて余程です。
「……すまない。相楽さん」
「いいえ、間違いは誰にでもありますから」
「その台詞は左之の前に出て言うでござるよ」
「無理です、怖いですもん」
きゅっと左之助さんの服を握り締めて、しとりとひとえと一緒に西郷四郎を含めた講道館の人達を警戒する。おそらく剣客兵器、凍座白也と旅をしていたときに彼らは出会ったのでしょう。
そう思いながら仕事は続けることを伝えて、道場の隅にみんなで移動し、私は左之助さんの隣に座り直して、また西郷四郎の絵を描き始める。
しかし、ヘンリー君は講道館の外で何を揉めているのだろうか。確かに、外国人ですけど。彼の魂は元々は日本人ですし、大丈夫だと思いますよ。
「母者、アヤカシの臭いだ」
妖怪ではなくアヤカシと言う個魔の方に従って、袖の中に仕舞っているショドウフォンを起動し、鏡面世界にシンケンジャーと外道衆を瞬時に転移させる。
私は指令でも総帥でもないんですけどね。