蛮竜の手入れを行う左之助さんに近づいて、うろうろとお手伝いをしたいけど。話し掛けても良いのかと不安になっているひとえの手を引き、彼に体当たり気味に抱きつくしとりの優しさに微笑んでしまう。
「ん!ひーちゃん、お手伝いしたいって!」
「おー、そうか。ありがとうな」
「んへへぇ」
ワシャワシャと優しく頭を撫でてもらえた事を喜ぶひとえとしとりは鈍く光る蛮竜の柄を手拭いで磨き始める。二人とも真面目に磨いていて、とても偉いですね。
「……母者、握りにくいわよ」
「こうして手を濡らすと良いですよ」
「おにぎりって作るの大変なのね」
「フフ、慣れれば簡単ですよ♪︎」
そう思いながら炊き立ての玄米と白米の混ぜご飯を米櫃に移して、軽く濡らした手に塩を少し塗り、ニギニギと三角形にお米を整形し、別の米櫃に置いていく。
鰹節を削って醤油やみりん、砂糖、煎り胡麻を混ぜて作ったおかかをお結びの真ん中に乗せて、少しお米を足して蓋をしてニギニギとお米を握り、梅干しや鮭の解し身を入れて、軽く焼いた海苔を巻く。
キュウリや茄子の浅漬け。二瓶鉄造の送ってくれた肉の腸詰めを焼いたものを縁側に並べて、ヤカンと湯呑みを用意して三人を呼ぶ。
「お昼ご飯出来ましたよぉ」
「ん?もうそんな時間か」
「ひーちゃん、お手手あらおうね」
「あい!」
のそのそと歩く左之助さんの前を小走りで走る二人は中庭に付け足されたひみつ道具『どこでも蛇口』と左之助さんの手渡す石鹸を使って、しっかりと綺麗に手を洗う三人を見つめる。
「ぴかぴか!」
「ん!えらいねー!」
嬉しそうに笑うしとりとひとえの姉妹を連れて縁側に戻ってきた左之助さんはおかかのお結びを手に取り、いつものように「いただきます」と一緒に言う。
「んっ、ん?んっ!!!」
「あらあら、酸っぱかった?」
「ひーはうめすき!」
「景の漬ける梅干しは美味いよな」
爪楊枝を使っておかずも食べる三人に湯呑みを渡していき、喉を詰まらせないようにひとえとしとりを見守っていると木刀が空を舞うのが塀越しに見えた。
三軒ほど離れているのに元気ですね。
「お肉好き!」
「二瓶のオッサン、此方でも行けるんじゃねえか?」
「そうですね。味付けしなくても美味しく下味を付けていますし、料理の才能も持っているけど。あの人が猟師を辞めるのは想像できませんね」
「……確かに、辞める前に喰われるな」
北海道は未だ未開の場所も多く、かなり妖怪や精霊、神様の住まう場所ではありますし。なぜか私もサンピタラカムイ様の巫女になっていますし。
私、人妻なんですが良いのでしょうか?