「…………」
モグモグと小さなお口にいっぱいお菓子を詰めて食べているひとえの頭を優しく撫でていると竹刀を持ったしとりが楽しそうに笑って帰ってきた。
最近、神谷活心流の道場に通い始めて剣路君と仲良く剣道の稽古に励んでいる。護身用として持たせた電光丸も日の目を見る日は近そうです。
「母様、けんちゃんに勝った!」
「フフ、流石はしとりですね!」
「ん!」
そう言うとしとりは防具を納めた袋の中を漁り、何かを探し始める。何かお手紙でも預かっているのかな?と思いながら、ひとえの口許に付いた食べ滓をハンカチーフで拭き取ってあげる。
ゆっくりと彼女が取り出したのは冊子だ。どこか見覚えのある冊子に目を擦りつつ、ジーーーッと見つめてようやく冊子の正体に気付いた。
「(私の描いた前世に漫画に登場する架空の剣術技絵を読んだだけで会得したのなら物凄い剣術の才能はあるのでしょうが、剣路君に何をしたんですか)」
「んとね。これ!」
「……まあ、比較的に安全な技ですね」
現実逃避にも思える納得を行い、私は「お母さんの本棚を触るときは予め教えて下さいね」とだけ、しとりにお願いすると素直に頷いてくれた。
しかし、正直に言えば桜一刀流は比較的に安全な技ばかりです。竹刀剣術を極めたものでもありますし、幸いなのは漫画本体ではなく技絵だったことだ。
もしもしとりに漫画を読まれていたら「クロガネ」もこの世界に混ざることになるし、桜一刀流こそ最強と謳う剣士の抗争に巻き込まれるところでした。
「母様、ごめんね?」
「うーん、可愛いので許します♪︎」
「わーい!」
よしよしとしとりの頭を撫でていると個魔の方が影から出てきて「嬢ちゃんの剣はエグかったわよ。切り返しの瞬間に手首を打ち、そのまま面からの回転斬りとかやり過ぎていたわね」と呟いた。
「……おこっちゃいやです?」
「むっ、私の真似をしてもダメですよ?あとで剣路君に謝りに……行くのは違いますね。神谷活心流の道場に居るんですから、しとりもちゃんと明神君に教わりながら向こうの剣道を学ぶんです」
「ん!わかった!」
「ねーしゃま、ひーもしたい」
「んっ。ひーちゃん、もてる?」
しとりは期待を込めて近づいてきたひとえに竹刀袋を差し出すもまだ小さい彼女には竹刀は持てず、コテンと小首を傾げながら不思議そうにしている。
まあ、そうなりますね。
「どうぞ、しとり」
「ん!ありがとお、母様♪︎」
「んへぇ…?」
「ひとえはもうちょっと大きくなってからですね」
流石に小さい子に剣道は難しいです。