あのドクトル・バタフライは私の知っているドクトル・バタフライ本人ではなく、横軸の世界の何処かに存在する。いわゆる並行世界の本人というものですね。
あの雰囲気だと向こうはかなり大変そうですし、此方の方のドクトル・バタフライは自分の趣味に生きているタイプの人間なので似ていませんでした。
「かーしゃま、いた!」
「わあ、見つかっちゃいました♪︎」
廊下を歩いていたひとえが私を見つけて、嬉しそうに抱き着いてくる。うん、やっぱりまた大きくなってきましたね。このままだと私は娘達に背を抜かれる。
悲しくも嬉しい現実です。
「あらあら、どうしたの?」
「んへへぇ」
私のお膝の上に頭を乗せて寝転ぶひとえの頭を優しく撫でてあげ、嬉しそうに笑ってい彼女は見つめていると「かーしゃま、おめめへん」と言われた。
袖の中に仕舞っていた手鏡を取り出して、自分の顔を確かめると確かに目の色が赤い。瞳孔に色を足されたようにも見えるけど。
また、なにかされたのだろうか。
そう思いながら身体を動かそうとした瞬間、不意に左腕が勝手に動こうとしたので掴んでしまった。……なにか頭の中に悲鳴じみたものが聴こえる。
『イデデデッ!?なんだこの身体ッ、動く度に痛すぎるだろ!?ばっっかじゃねえの!?こんな身体を乗っ取れとかクソ過ぎるんだけど!?ファッキュー!!ツカサなんてハゲちまえ!!』
「ひとえ、何か言いましたか?」
「ひーなにもいってないよぉ?」
「そうですよね」
────と言う事は、だ。
私の身体の中に知らない誰かが入り込もうとしている存在に意識を向けると沢山の本棚や本に潰されて動けなくなっている砂のお化けがいた。
成る程、楯敷ツカサの仲間ですね。
「ひとえ、お耳を塞ぎますね?」
「やっ!」
「……じゃあ、仕方ないですねえ」
「むにゅうぅぅぅっ!!」
モチモチとした頬っぺたを捏ねて、うにうにと遊んでいると『あのー、そろそろ助けて貰えます?』という声が聴こえてきますけど。
人妻に手出ししようとした楯敷ツカサの仲間とお話しするつもりはないので無視して、ひとえと遊びながら剣道に励んでいるしとりの事を静かに応援する。
『マジかよ、無視してるよ。こういうのって「お前は何者だ!」とか「まさかアイツの仕業か!?」とか狼狽えたりするじゃねえの?』
「ドクトル、ちょっと来て下さい」
そう言うと目の前に前世から見慣れているピンク色のドアのひみつ道具『どこでもドア』が現れ、パチクリと目を見開いて驚くひとえにクスクスと笑ってしまう。
「何かね?」
「身体の中に何かいます」
『あ、気付いてたのねぇえ!?』
「ふむ、信二君の話していたイマジンだね。彼にも願いを迫ったが強すぎる願いを叶えきれず、見事に爆発四散していたね」
それは、もう違う生き物では?