ドクトル・バタフライによって私の身体を飛び出して現れた砂のお化け───イマジンは砂を撒き散らさないように桶の中に居て貰う。
「オッサン、この女の身体やべえぞ」
「ふむ、妻の方がスタイルは良いが?」
「そういう話じゃねえよ。この女、平気そうな顔してやがるが全身に痛みを感じる上、動く度に死ぬんじゃねえかって激痛が走るぞ!!」
その言葉に目を見開くドクトル・バタフライは真偽を確かめるために私の方を見つめるので「もう慣れているので、問題ないですよ」と伝える。
ひとえに嘘を吐く母親とは思われたくありませんし。なにより隠したところでいずれバレてしまう事実を隠しておく必要はありません。
「お前の願いはアレだな。健康になりたい」
「違いますよ。私の願いは私にしか叶える事は出来ませんし、正義だ悪だと罵り合う関係に加わるのも怖いのでイヤです。そもそも快楽を求めるイマジンに、二十数年間同じ痛みを味わえと言うつもりもありません」
いつもより口数の多い私に「まあ、子供を巻き込みかねない事態に怒らないわけがないね」と納得し、イマジンは悔しそうに「オレは怪人になれないままか」と溜め息を吐いて、項垂れている。
「ひーがおねがいしゅる!」
「ひとえ、ダメですよ?」
「やっ!」
こうなると頑固なのでひとえの意思を曲げたり変えたりすることは出来ないですね。本当にこういうところも左之助さんにそっくりです。
そう思いながら、桶の中に入っているイマジンの事を見据えて「悪いことはしませんね?」と問えば「しないしない。ってか、その身体を乗っ取るのは無理だ」と直ぐに言い返してきた。
ひとえの優しさを信じましょう。
もしも、ひとえの優しさを裏切ったら許しません。
「では、どちらと契約するのかね」
「断然、ガキの方だな」
「ひとえはガキじゃありませんよ」
「……子供のほうで頼む」
そう言うとイマジンはひとえに契約を持ちかけるも「おともだちになって!」という言葉を受け、なんとも言えない表情を……表情を?浮かべている。
だんだんと形を変えたイマジンは白かった。純粋な願いを受けてしまった影響なのか、白い身体に赤い線のデティールが入っている。
「初契約おめでとう。ひとえ君、お名前を」
「おなまえ?ひーはひーだよ?」
「いや、そうではなく。うーん」
「オレの名前を考えてくれ」
幼児に名前をねだる怪人。
なんだか別の妖怪に見えてきましたね。もはやこれはもう別の妖怪なのではないでしょうか?