「糸色君、ちょっと良いかね?」
「はい。なんですか?」
くるりと後ろに振り返るとドクトル・バタフライが立っていた。どこでもドアを使って、またやって来たんでしょうか?と首を傾げる私に、彼は徐に白い手袋を嵌めた右手を差し出してきた。
「ガイアメモリの製造法を教えてほしい!」
「いやですよっ!?」
思わず、声を荒げる私にショックを受けるドクトル・バタフライに「どうして、いきなりそんなことを?」と聞けば「ススハム君に聞いてね。とても素晴らしいアイテムじゃないか」と言い、彼は笑った。
素晴らしいデザインとアイテムなのは認めますけど。この明治時代にUSBメモリを模したアイテムや回路基盤を作るのはとても大変です。
私は絶対に作りたくないですね。
「そもそもガイアメモリを作るとき、私を素材にすることになるんですよ?」
「それは絶対にダメだ。私は今世で手に入れた大切な友人を失うわけにはいかない。……ちなみに私一人で作ることは可能なのかね?」
「無理です。私の知識が要りますし」
正確には私の『前世の記憶の保持』による特定の記憶を抽出し、ガイアメモリという存在にダウンロードして、更に試験を繰り返してようやく完成する。
しかし、あくまで地球の記憶を抽出して作っているため人間の身体に与える悪影響は測ることは不可能。ドーパント化した場合、その毒素に心身を病んでしまう可能性もありますから教えたくない。
「景、だれか来て……オッサン」
「hello。左之助君、また糸色君の知恵を借りるために来ているんだが、少しばかり難航していてね。左之助君にも助言を求めて構わないだろうか?」
「……別に良いが、景の傍を離れろ」
ズカズカと歩いてきた左之助さんは私を抱き締めるように手繰り寄せ、ドクトル・バタフライに文句を言う。最近、左之助さんの妬心が増しているように感じ、なんだか嬉しさと恥ずかしさを同時に抱く。
「痛っ」
「悪い、力んじまった」
「い、いえ、大丈夫です」
ミシリと彼の抱き締める腕の力で骨が軋み、呻き声を出してしまう。年々、左之助さんは全体的に力を強めているように感じる。
だから私の身体に掛かる負担も大きくて、だんだんと左之助さんに抱き締めてもらえる事が減っている。私は痛くても抱き締めてもらえると嬉しいんですけど。
どうしたら、良いんでしょうか。
「……ゴホン。イチャイチャするのは構わないが、せめて二人きりか夜にしてくれないかね。友人の情緒が乱れるところを見るのは些か気恥ずかしい」
わ、忘れて下さい……!