「そういや『特異点』ってのは何なんだ?」
晩酌のおつまみをポリポリと食べていた左之助さんが急に思い出したかのように呟き、一緒にお酒を飲んでいたドクトル・バタフライも私の方を見てきた。
ドクトル・バタフライは昭和ライダー(主に1号からストロンガーまで)は知っているそうですが、それ以外の平成ライダーには興味を惹かれなかったそうです。
彼も『仮面ライダー電王』には詳しくないのですが、どうやって説明しましょうか。そう考え込みながら、お摘まみの沢庵をポリポリと食べる。
「……『特異点』というのは時間の改変や時間の消滅を受けない人間の事です。ソウタロスの事を弾けるのもこの『特異点』としてのおかげです。賛さんや武藤君の言っていた『糸色景は特異点』もこれですね」
徳利に入っているお酒を左之助さんのお猪口に注ぎ、そう伝えるとよく分かっていないのか、もう酔ってしまっているのかクエスチョンマークを出しています。
流石にドクトル・バタフライは分かるらしく「タイムパラドックスを受けない存在ということだね」と解答を呟きつつ、お酒を飲んでいる。
ホムンクルスなのにお酒を飲むんですね。
「……要するに景を狙うヤツは多いわけだな」
「何処を要約したんですか?」
「事実ではあるね」
二人とも酔っているのかな?と首を傾げながら、爪楊枝でまた沢庵を刺し取ってポリポリと食べる。糠漬けのキュウリや茄子も良いですが、やはり大根ですね。
「左之助君、君は酔わないのかね」
「酒は回ってるが酔ってないぞ。あとで景を運ばねえといけねえし、その『特異点』の話もしっかりと聞いておかねえとだからな」
左之助さんはそう言うと空っぽになった徳利を覗き込み、中身の有無を確認した後、梅干しを食べ始める。ガリゴリと梅干しの種まで食べていく彼に、ビクリと私の身体が跳ねる。
いきなりすぎてビックリしてしまった。
「種は食べちゃダメですよ」
「ん。こんくらい平気だって」
「胃が溶けちゃいますよ?」
「ゴブッ?!マジでかッ」
自分のお腹を押さえる左之助さんですが、毒があるのは事実なのでウソではありません。そういうものは食べずに出汁を取ったりするのに使います。
あとは消毒にも使えますけど。
「糸色君、ジョークが通じていないよ」
「フフ、可愛いですよね♪︎」
「じょ、冗談か、驚いたぜ」
「「毒があるのは本当」」
「…………死ぬ毒じゃねえなら良いや」
ごろりと私の太ももに頭を乗せて寝転ぶ左之助さんの頭を優しく撫でてあげる。