忙しなく動く左之助さん達の事を眺めつつ、竹刀を振るっているしとりの楽しそうな笑顔にほっこりとしてしまう。やっぱり運動するのが好きなんですね。
ただ、剣道の動きじゃなくてアクロバティックすぎる動きにひとえは頭をグワングワンと振って大変な事になっている。個魔の方が教えたのかしら?
「ん!!」
「今のは危なかったぜ」
「避けちゃだめ!」
いえ、避けないと危ないですからね?と言いながらもしとりの太刀筋に姿お兄様の面影を感じる。でも、お兄様のように天賦の強さは持っていない。
すべて見て覚えた技術なのでしょう。
「りゅーついせん!」
「うおっ!?」
ぐるりと空中に飛び上がると同時に縦回転し、竹刀を振り落とすしとりの一撃を片腕で受け止めるもその腕を足場に使い、更にしとりは高く舞い上がる。
「りゅーついせん!!」
今度は縦回転を多く加えた振り下ろし。
回転する勢いを乗せた一撃が左之助さんの腕を弾き、がら空きの胴に向かって空中に浮かんだまま身体をひねり、横回転の剣戟を放った。
───けれど。しとりの竹刀は左之助さんを捉える寸前に繰り出された左拳による二重の極みに砕かれ、鍔と柄を残して竹刀は壊れてしまった。
「左之助さん、やりすぎです!」
「悪いッ、大丈夫だったか?」
私達は慌ててしとりに駆け寄ると、キラキラと輝いている瞳が左之助さんの拳を見つめ、自分の壊れた竹刀にも視線を向ける。
「しとり、もっとしたい…」
「よく分かんねえけど。大丈夫そうだな」
「ダメに決まってるでしょう。しとり、竹が目に入っていないかだけ見るわね?」
「ん!」
ゆっくりと彼女の目を見つめる。竹の破片やゴミは入っていないけど。流石に危ないことが起こったのに、すぐ稽古に戻すわけにはいきませんよね。
「ねーしゃま、だいじょぶ?」
「ひーちゃん、だいじょーぶ!」
フンスと袴と胴着姿のしとりは自信満々に言ってるけれど。左之助さんの二重の極みを武器越しとはいえど受けて大丈夫なのか不安です。
「二人ともお掃除手伝ってくれますか?」
「する!」
「しゅる!」
「壊したのはオレだから良いぞ?」
「じゃあ、みんなでやりましょう」
そう言うと私は塵取りと箒を用意して、いそいそと掃き掃除を始めるしとりとひとえの二人の傍で塵取りを構えてあげる。
やっぱり、こうして仲良く過ごすのは良いことです。
それにしても、しとりの成長速度はすごいですね。いつ見て覚えたのかも分からない動きをいきなりしてしまうなんて、天才なのでは?