左之助さんが酔いつぶれて私を抱き締めたまま居間で眠るという暴挙に出た事実を彼は綺麗サッパリ忘れていて、私にあんなことをしたことも忘れています。
やはり深酒はダメだと思う。
しかし、最近はまた何処からか視線を感じることが増えてきました。奈落というわけではありませんが、どうにも私を見つめている。
「隙間?」
ショドウフォンで『防』の文字を書いて家の中の隙間を覗く。視線は無くなりましたから、私の事を覗き見していた外道衆の誰かがいるのは確定ですね。
でも私を見つめて何を?
おそらく北海道に居るときにやって来ていたしとりのお友達でもあるナナシから情報を聞き出したのでしょうが、私はショドウフォンを提供しただけです。
「しとり、ちょっと良いですか?」
「ん!なにぃ?」
ひとえの事をお膝に乗せて抱き締めていたしとりに話しかけるとひとえの事を抱っこして私の傍に座り直す彼女のおでこに触れる。
こうすると何となくですが、モヂカラを感じ取ることが出来ます。やっぱり私よりも大きく力強い『火』のモヂカラを身体の中に宿しています。
「?」
「しとりはお侍さんになりたい?」
そう私は娘に問い掛ける。
「んーん、ならないよ?」
これは酷かも知れないけれど、外道衆に狙われたら簡単に戦いから逃げることは出来なくなるし、何より外道衆を相手に変身せずに戦い続けることは難しい。
それに『火』の文字を描いて変身する事は出来ませんし、火に関する言葉から肖るのも良いかも知れませんね。しとりやひとえの選択肢にもなりますし。
「母様、なやみ?」
「フフ、ちょっと考え事です」
「ん!」
大事な娘達に戦って欲しくないですが、自衛する方法は必要だ。二人が人として正しく、外道に堕ちること無く歩んでいけるように『
意味は『光り』『恵み』『ほまれ』『ありさま』等々ありますけど。一番の理由は『時間』という意味を含んでいること。
永く生きていけるように、おまじないです。
百歳まで生きれば最高です♪︎
「健やかに成長してくださいね」
そう言って私は二人の頭を優しく撫でてあげる。ひとえは眠そうにアクビをして、しとりにもたれ掛かり、目尻を擦ろうとするのでハンカチーフで拭く。
左之助さんもそうですが、ひとえは誰かにくっ付いているのが大好きですね。大好きな人ができたら、私みたいになるのかしら?
「ん!ひーちゃん、ねんねする?」
「んへぇ…すゆぅ……」
かわいいですね。