不二は巨大な野太刀を振り下ろし、切り返しからの横薙ぎ、と続け様に放つには余りにも強力すぎる連続技が暴風のごとき斬撃の衝撃を巻き起こして、私はその衝撃に耐えきれず、半壊した「葵屋」の柱に抱きついて何とか堪えることしか出来ない。
その私を支えるように神谷さんと巻町さん、明神君に御庭番衆の方々は巻き起こる砂塵に両目を細めながら野太刀を受け止め、往なし、当たり前のように巨大な野太刀を腕力で弾き上げる比古清十郎を見つめていた。
「ヌウウゥゥッ!!!」
「なんだ、今度は力比べか?」
鍔迫り合いの筈なのに、圧倒的に体躯で勝っている不二の優勢の筈の力比べに応じた比古清十郎は不二の超重量級の重さを一身に受け止める。
「随分と嬉しそうだな、不二」
「…あ、…嗚呼ッ……!…」
「ならば俺も更に応えよう!」
ボコりと比古清十郎の両腕の筋肉が盛り上がり、不二の野太刀を弾き上げ、僅かにぐらついた一瞬の隙を見逃さず、比古清十郎は不二のがら空きになった顎に向けて峰に構えた刀を振り上げる。
緋村剣心の多用する技の一つ、飛天御剣流「龍翔閃」が不二の顎をカチ上げ、彼の巨体は後ろ向きに仰け反り、「葵屋」の方へと───つまり、私達のところに倒れてくるのが見えた。
「ひえっ!?」
「ちょ、ちょちょちょちょっ!?」
「男衆、受け止める準備じゃあ!!」
「翁、アレは無理がある!」
私と巻町さんはアタフタとしながら迫り来る不二の背中に、どうやって対処すれば良いのかと焦り、神谷さんを見るも彼女は迫り来る背中を悟った顔で見上げていた。
般若や柏崎さんも少し錯乱しているのか。御庭番衆の男の人達は一斉に両腕を突き上げ、そろそろ私達に激突する不二を受け止める準備を始める。
まだ祝言も挙げてないのに!?と思わず、そう叫びそうになる私達の目の前に再び白外套を靡かせて比古清十郎が現れた。
「怪我してないな、お前ら」
そう言って私達に振り返った彼は片手で不二の巨体を受け止めている。や、やっぱり作中最強にして、チートキャラなんて言われる人は桁外れに凄いわ。
「は、はい」
「た、助けるなら早くしてくれよ。心臓が破裂するかと思ったじゃねえか!」
「それだけ言えるなら平気だ」
明神君の怒りに同意する人もいる中、私は完全に腰が抜けてしまい、地面にへたり込みながら近くにいた本条さんの手を借りて、なんとか立ち上がる。
一瞬、御庭番衆の方々は警戒したものの武器を持っていない上、直ぐに私を巻町さんに差し出したことで警戒心は少しだけ緩んだ。
「それで、アレはどうする?」
その言葉にハッとして辺りを見渡す。
ぼよん、ぼよん、とお腹の脂肪を使って跳ねる夷腕坊は屋根に向かって跳ね回り、何処かに向かって跳んでいってしまった。
結局、外印は何もしてこなかったけれど。