原稿用紙の補充をするために、しとりとひとえと一緒に町を歩いていたとき、隙間を通って出てこようとするナナシ連中が現れ、人々の慌ただしく恐怖の混じった悲鳴が喧々囂々と響き渡る。
ここ数日ほど外道衆の動きは活発化しているのか、日本諸国の至るところに現れているらしく、池波君がそれを知らせに来てくれた。
まだ、何か言いたそうだったけれど。
直ぐにまた戻ってしまった。
そう考えながら私達もナナシ連中から逃げるように移動し、黒子を従えてやって来た五人の侍を見つめる。各々の持つモヂカラを象徴する文字を描き、五色の侍に次々と姿を変えていく。
しとりは私の事をキラキラとした目で見るものの、私は変身できませんよ?と伝えるとしょんぼりとしてしまいました。子供に嘘は言いません。
確かに、しようと思えば出来ます。
しかし、私は死にたくないし痛いのもイヤだ。
「鏡面開門!」
志葉誠輔の変身した赤色の侍、シンケンレッドが宙に描いた『鏡』は巨大な鏡面体を作り出し、その中にナナシ連中を吸い込み、彼らも鏡の中に飛び込んでいく。
日本各所にドクトル・バタフライの設置した『鏡面世界』発生装置を利用することで、侍戦隊シンケンジャーは民間人に及んでいた被害を抑える事に成功し、向こうには人間はいないけれど。
向こうの世界にも隙間は存在しているし、時間経過と共に鏡面体は閉じてしまうため、そのまま外道衆やアヤカシを隔離して封印することには使えない。
精々が特撮の『場面転移』に相当する行為です。
「ナー!」
「ん?ん!!ななしちゃん!」
「ナー!ナー!シィ゛ーーー!?」
しとりに気付いて嬉しそうに手を振っていたナナシでしたが、彼もまたあっさりとスポンと鏡面体に吸い込まれていった。しとりは悲しそうに目を伏せる。
「ななしちゃん、消えちゃった…」
「いや、そうでもないよ」
「え?」
個魔の方が右手を鏡面体に差し出した瞬間、一枚の紙がしとりの元に飛んでくる。赤と黒の紙札───『妖逆門』に登場する撃符がまた一枚、彼女の手元に現れた。
「私の貸したヤツじゃない。ソイツが嬢ちゃんの手に入れた最初の一枚目だ。大事に使ってやりなさい」
「ななしちゃん…!」
ナナシの封印された撃符を嬉しそうに抱き締めたしとりに「良かったわね」と彼女の頭を優しく撫でてあげる。ひとえはまだよく分かっていないながらも「ねーしゃま、よかったねえ」と一緒に笑っています。
フフ、本当に良かったですね、しとり♪︎