某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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火の殿様 序

「糸色、相楽、来たぞ!」

 

「あの、私も相楽です」

 

「糸色は旧姓だ。あと帰れ」

 

お供も従えずにやって来たシンケンレッド、志葉誠輔は以前の真摯さや真剣さは薄れ、何処か快活とした爽やかな好青年の笑みを浮かべています。

 

我が家にやって来た理由も「糸色景に外道衆の情報を共有するため」という名分を掲げている上、糸色家と相互関係にある志葉家の御当主である。

 

下手に追い返すとお父様とお母様のご迷惑になってしまいますし、あの塀の向こうから此方を覗いている池波君の事は一先ず無視するとして、些か自由人すぎます。

 

「しかし、女房か」

 

「なんだ?殿様なのに居ねえのか?」

 

「ああ、いや、オレを求めるヤツは居るには居るんだが一回だけ外道衆の変化したヤツにな……」

 

「……嗚呼、そういうことか」

 

「?」

 

そう言って顔を逸らす志葉誠輔の笑顔は翳る。左之助さんは理解しているのか、哀れみの眼差しを向けているけれど。私にはよく分からず、首を傾げてしまう。

 

戦うことに関しては『前世の記憶の保持』は兵器製造や戦闘技術の最適解を出す。────ですが、その力を自由自在に扱える肉体スペックはありません。

 

「相楽、お前は良いヤツだ」

 

「おう。じゃあ、帰れ」

 

「それとこれは別だ」

 

にっこりと笑っている左之助さんが私の肩に手を添えて、チラリと塀の向こうから此方を覗いている池波君に視線を移し、そのまま頭を撫でてきた。

 

「んッ…いきなり、なんですか…」

 

「こういうわけだ。帰れ」

 

「どういうわけだ。退け」

 

「(二人ともまだ朝なんですが、その事を忘れて喧嘩したりしませんよね?流石にご近所さんにご迷惑を掛けるのはダメだと思いますよ?)」

 

最近は「お化け屋敷」とか「あの奥さん、初婚だったのか!?」とか「綺麗なのに怪しいんだよな」とか「やっぱり、先生が黒幕なんじゃねえか?」とか言われているんですからね?!

 

「うちの姉妹が親友ん家に三日泊まるんだよ」

 

「ほう。それが?」

 

「三人目を仕込む」

 

「え?」

 

ささっと左之助さんから距離を取り、そそくさと離れようとする私の手を掴み、志葉誠輔と向き合ったまま振り返らない左之助さんに不安を抱く。

 

最近の左之助さんは助兵衛すぎます。

 

茹でるように熱くなっていく頭を片手で押さえながら渋々と帰っていく志葉誠輔に彼の暴挙を止めてくださいと視線で訴えるも無視された。

 

「や、やさしくして?」

 

「三日もある」

 

それは違うんじゃないですか!?と叫びたい気持ちになりながらも、どうせ逃がして貰えないのだからと諦めて私はされるがまま、寝室に運び込まれ。

 

 

 

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