「池波、テメェ見てたからなァ?」
「某は何もしていない」
傷の手当てをする私を挟んで口論する左之助さんと池波君の二人に少しだけ溜め息をこぼす。池波君の趣味嗜好を否定するつもりはありませんが、人妻に好意を向けるのは良くないことです。
「ん!母様をぎゅーしてた!」
「かーしゃま、とっちゃめっ!」
「おう。証人はいるぜ」
「それでも某は無実だ」
やいのやいのと言い争う二人から離れて、救急箱を戸棚の脇に置いておく。ドクトル・バタフライの作った医療品なので信頼は出来ます。
まあ、危険な物もあるけど。
大体は子供達の手の届かない場所に置くか四次元袖の中に仕舞ってしまえば問題にはなりません。……本当に長い口論をしますね。
「池波、帰るぞ」
「はっ。……さらばだ、糸色」
「二度と来るな、横恋慕」
そう左之助さんは志葉誠輔の後を追いかける池波君に文句を言いつつ、私の事を連れてまた家の中に戻っていく。やっぱりと最近の左之助さんは精神的に不安定になることが多々ある。
「景はオレのもんだ。誰にも渡さねえ…!」
「愛の押し付けはダメですよ、嬉しいけど」
苦笑する私に彼は不服そうな表情を浮かべ、ワシャワシャと私の頭を少しだけ乱暴に撫で回してながら、私の頬っぺたを摘まみ、お仕置きをし始める。
今回の騒動の原因は志葉誠輔だ。
少なくとも記憶はすり替えると言っていましたけど。一体全体、何をするうつもりなのしら?と首を傾げながら、私はお洗濯物を畳んでいく。
「しかし、景の周りには変態しかいねえな」
「へんたいしゃん?」
「ひとえは気にしなくて良いんですよぉ?」
「あい!」
「しとりはしってる!ばーちゃん!」
確かに、ドクトル・バタフライは変態さんですね。あの人は無自覚に変態的な事をしていますし。お髭やスーツは良いとは思うんですけど。
やはり、未来を生きていますからね。
────とは言えだ。彼の技術と知性のおかげで私は生きていることが出来ますし、あまり悪くいうのは良くないと分かってはいるんですけど。
「悪口を言っちゃダメですよ?」
「ん!」
「あい!」
「うん。良い子達です♪︎」
よしよしと二人の頭を優しく撫でてあげていると、左之助さんが私の頭を撫で始める。いえ、あの?私はお母さんなのでよしよししなくても良いですよ?
「景も良い子だよ」
「子供扱いですか?」
「いや、本心だ」
左之助さんに頭を撫でてもらうのは悪い気はしませんけど。流石に子供達の前で頭を撫でられるのは、こう、ほんの少しだけ恥ずかしいです。