某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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蛮竜、兆し 序

中庭で蛮竜の手入れを行っている左之助さんの背中を見詰めていると無性に怒りたくなる時がある。まるで蛮竜が「私の方が愛されてますが?」とアピールしているように思えてしまいます。

 

まあ、有り得ないことですけど。

 

やっぱり気になるものです。

 

ただ、奪鬼の妖気を吸う力を手に入れたのは僥倖と言える。今までの相手は蛮竜の「熱風」と「蛮竜閃」だけで対処していたけれど。今後は相手の力を吸い取り、左之助さんも安全に戦えるはずだ。

 

「この鱗模様全然落ちねえな」

 

「あの左之助さん?それ刀身が変化してるんですよ?」

 

「汚れじゃねえのか?」

 

成る程、どうやら左之助さんには蛮竜がどういうものなのかを説明しないといけないわけですか。それは、なんというか大変そうです。

 

「左之助さん、蛮竜は何でしょうか」

 

「大鉾だろ?妖怪の打ち直した」

 

「そうです。刀々斎様の鍛え直した大鉾が、鱗模様の汚れを作るわけがない。それは奪鬼から奪い取った相手の力を奪う刀身になります」

 

「景に使ったらどうなる?」

 

「死にます」

 

私の身体に蛮竜なんて突き立てたらミンチになりますし。なんなら原型を留めないほどに酷い最後を迎えるかもしれない。

 

それだけはイヤですね。

 

まだ死にたくないですから、せめて二人が十五歳を迎えるまで生きたい。

 

「景、どうしたんだ?」

 

「ああ、いえ、なんでもないですよ」

 

「嘘だな。何隠してる?」

 

そう言って私の傍に移動して、おでこを触った。

 

「風邪じゃねえな」

 

「けほっ、ビックリするじゃないですか」

 

「悪いな」

 

「フフ、良いんですよ♪︎」

 

私の事を心配してくれていたのは分かっていますから、蛮竜より私を優先してもらえるだけで私はとても幸せです。嬉しい気持ちになれます。

 

「じゃあ、拗ねた理由は?」

 

「……左之助さんが蛮竜に集中していたから寂しかったんです、すみませんでした」

 

武器に嫉妬するなんて変ですよね。ちょっと変だとは自分でも分かっているんですが、どうにも蛮竜から無駄に煽られているような気配を感じる。

 

こう「私の方が左之助さんの役に立っていますが?」やら「フフフフ、お前ごときが左之助を支えたつもりになっているのか?」とか聴こえる。

 

そういうのは止めて欲しいですね。

 

()左之助さんのものなのに、いきなり横入りすることは許しませんよ。

 

まだ子供のしとりやひとえに悪影響が出たらどうするつもりですか?と左之助さんに問えば「大丈夫だ。二人には手出しはさせないさ」と優しく言ってくれました。 

 

 

 

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