「結界破りの赤い鉄砕牙」や「竜鱗の鉄砕牙」等々の刀々斎様の鍛えてくれた蛮竜には似たような能力が宿るのかも知れませんね。
現在は「竜鱗の蛮竜」だけですが、賛さんは「金剛石の蛮竜」の事も話していました。いずれ左之助さんが手に入れるのか、はたまた別の子が未来で体得するのか。
とても興味はあるけれど。
左之助さんの負担も大きくなってしまいます。
「景、砥石って使っていいか?」
「構いませ……それ、砥石ですか?」
「オッサンがくれた」
そう言って大岩を担ぐ左之助さんに困惑しながらも私は水を含んだ大岩に蛮竜を擦り付け、研磨を繰り返す彼の事を見詰める。
私としては普通の砥石を使う方が良いとは思うんですが、大鉾の全体を研磨するにはアレがちょうど良いのかも知れないですね。
ガンガンと砥石と蛮竜をぶつけているようにも見えるものの、きっと気のせいですね。流石にあれだけ力任せにやっていたら砥石が砕けます。
「かーしゃま、だっこ」
「あらあら、どうしたの?」
目尻を擦ろうとするひとえの事を抱き締めて、お膝の上に乗せてあげる。いつもならお昼寝しているのに、今日は起きてしまったのかしら?
理由を考えていると砥石を叩く音が聴こえて、ひとえが起きてしまった理由は判明した。しかし、なんとも言えないのは事実である。
左之助さんは武器の手入れを行っているだけで、ひとえの事をわざと起こそうとしていた訳じゃないですから、仕方の無いことなのでしょう。
「んへぇ…ぽかぽか…」
「フフ、お母さんも暖かいですよぉ♪︎」
よしよしと彼女の頭を撫でてあげていると、うつらうつらと眠気にまた誘われて欠伸をするひとえを横抱きにして、ドンと親分に座布団とタオルケットを持ってきて貰い、ひとえをその上に寝かせる。
「お休みなさい、ひとえ」
ゆっくりと寝息を立て始める彼女の頭を撫でているとドンと親分もひとえの傍に寝そべって、眠ることにした様だけど。
ムジナかタヌキか分からない貴方は何?
フスフスと鼻を鳴らしながら寝る場所を探しているけれど。別に此処は遊園地や動物を匿っている場所というわけでもない。
ごくごく普通の家庭です。普通の家庭です!
「貴方は何者なのかしら?」
「タヌキだろ」
そう言ってムジナかタヌキか分からない生き物のうなじを掴んだ左之助さんは「タヌキ鍋っていうのも美味いかも知れねえな」なんて呟いています。
流石に、今のは冗談ですよね?
私は料理にタヌキなんて使ったことないですからね?クマや鹿は二瓶鉄造のおかげでありますけど。