「……すごい…」
緋村剣心と左之助さんの二人は次々と襲い掛かってくる剣客警官隊の隊士に臆する様子も無く戦っている。左之助さんは剣戟の中を突き進み、軍刀の柄を握る手を掴んで押さえつけ、喧嘩相手に良く石頭と自慢する頭突きを見舞う。
その傍らで三人の警官を相手に剣戟を受け、往なし、瞬時に胴を薙いで相手を無駄な動きを見せず、最小限の動きのみで警官を倒す緋村剣心の強さ。
やっぱり、この二人は強さのレベルが違う。
「き、貴様等ぁーーーっ!!!」
その怒声に身体が跳ね上がり、神谷さんと一緒に二人の目先にいる剣客警官隊の隊長を見据える。彼の顔は怒りと羞恥で真っ赤に染まり、軍刀を握る手に力が籠っているのが素人の私にも分かった。
「ありゃあ不味いな。怒りで錯乱してやがる」
「嗚呼、少々不味いことになる」
「さて、どうすっかね」と、左之助さんは腕を組んで熟考する。その真横にいた緋村剣心は逆刃刀の切っ先を鞘の口に刺し込み、カキンと納刀してしまった。
「───それならば一撃で倒せば良い」
ザッ…!と緋村剣心の間合いが広がる。
緋村剣心の異様な圧を感じる居合の構えに誰もがゴクリと生唾を飲み、剣客警官隊の隊長と向き合う姿に野次馬の視線が瞬きを忘れるほどに集中していく。
「チイェエストオオォォッ!!!!」
烈帛の掛け声と共に薩摩剣士の多くが使っていたという示現流独自の大上段の構えより繰り出された一撃必殺の剣戟に緋村剣心は臆せず、力強く深く前へと踏み込み、逆刃刀を鋭く疾く抜き放った。
ガキィンッ!
刹那、鈍く嫌な音が響き渡った。
「マジかよ、刀を刀で叩き折りやがった」
いつの間にか私の隣にやって来ていた左之助さんの言葉に納得すると同時に、私はへし折れた軍刀を握り締めたまま前のめりに倒れ伏す剣客警官隊に手を合わせる。
「左之助さん、あの人は」
「嗚呼、さっきの抜刀術を受けたときにアイツの矜持は完全に砕かれた。自業自得……って言えたら良いんだが今回はオレの撒いた種だしなァ……」
そう言って頭を掻く左之助さんの言い分は喧嘩を買った側としては正しい事なのだろう。しかし、彼らは左之助さんが関わらなくても何時かは報復は受ける可能性のある人達だ。
「他の警官も集まり始めてるな。糸色、逃げるぞ」
「いや、私は無関係の、あの話を聞いて…!」
左之助さんはボソリと呟き、私の身体を抱き上げるなり、スタコラと走り出してしまった。まだ神谷さんと緋村剣心にお礼を言えてないのに───。
まあ、東京に居れば何時か会えるわね。