「ひとえ、その子は?」
「そーちゃん」
「オレは乗っ取るつもりはなかったんだ。ちょいとひとえが危なそうだったからよ、適当なヤツに憑依して手助けしてただけなんだよ」
そう言って困ったように笑う少年に乗り移っているソウタロスをどうやって怒るべきなのかを考えながら、赤いメッシュと赤目に変化している少年を見る。
「その子の名前は分かりますか?」
「いや、分からない。少なくともオレの記憶にあるヤツではないし、コイツに憑依出来た理由も分かんねんだよな。まあ、直ぐに抜ければ大丈夫だろ」
「そーちゃん、だいじょーぶ?」
「おう!ひとえのおかげで平気だぜ!」
グッと親指を突き立てた少年。
この子の親御さんが探しているかも知れないから早く帰してあげたほうが良いんですけど。完全に憑依してしまっている場合はどう対処しましょうか?
「ん。そーちゃん、でて?」
「あー、待て。せめて家の外でだ」
そう言うとソウタロスは塀を飛び越えて、戻ってくるときは白いイマジンの身体に戻っていた。今の契約者はひとえ。彼女の純粋な「お友達になってほしい」という願いのおかげで、彼の身体は悪意無き白です。
彼女の優しさは染めることが出来ないという風にも見えるし、全てに染まることができ、全てを呑み込める純粋なる白とも言える。
しかし、本当に困りましたね。
ソウタロスの憑依先は私かひとえだけだと思っていたのですが、このままだとソウタロスは自由に他人の身体に憑依出来るということになる。
「景、どうかしたのか?」
「何でもないです。ソウタロス、貴方の生態の謎の多さに悩んでいるだけですよ。それに、時間移動を行える貴方は既に契約を完了しているでしょう?」
「ひとえを裏切って良いってのか?」
「イマジンとしての特性を聞いているんです。契約完了と同時に貴方は時間を移動できる。『お友達になる』という契約を結び、既に貴方は終えているのに留まる理由を教えて下さい」
「……オレは記憶を無くしたイマジンだ。そんなオレにも『糸色景の力を奪え』『糸色景と契約しろ』なんていう、ふざけた命令は聴こえるさ」
その言葉に口を噤む。
「────だがな、オレは恩を裏切るつもりはない。アンタ達に助けて貰った。家族に迎えて貰えた。人として、対等に接して貰えた嬉しさを捨てるなんて出来る筈がないんだよ」
そう真剣に私を見下ろして告げるソウタロスの身体に赤色の染色が起こり、静かに隈取のように目元に変化が起こっていく。
手首や足首の装飾も赤く染まる。
「オレはソウタロスだ。───だけど、少し思い出した。オレは相棒と一緒に、あのツカサを止めるために戦っていたんだ」