しとりとひとえの二人は仲良しです。
姉妹喧嘩は起こった事はなく、むしろお互いを大切に思いすぎている気もします。良いことなのでしょうが、少しだけ不安にもなってしまう。
しかし、二人の笑顔を見ていると悩んでいることが、どうでもよくなりますね。ソウタロスもドン達に巻き込まれて日向ぼっこをしているし。
危ないことが少ないのは良いことです。
「景、何してんだ?」
「お仕事です」
正確には、ドクトル・バタフライに頼まれていたひみつ道具の設計図を描いていると言うべきですけど。私の真横に座っている左之助さんには設計図は見えている。
もはや、それを隠す必要もない。
「提灯の一種か?」
「はい。街灯の普及は滞っていないですが、此方は手持ち型の提灯として頼まれたものです」
左之助さんの問いかけに答えて、描きかけの設計図を彼に寄せる。カンテラ。灯油ランプとも言う道具を軽量化し、警官隊の夜間活動を手助けする道具です。
尤も外見は懐中電灯になりますけど。龕灯みたいに重たいものを常に持ち歩くわけにはいきませんから、こういうハンディタイプの道具は必需品になる。
「この細かい竹がねえ?」
白熱電球のフィラメントにも竹は使われていましたから、それに明治十二年に白熱電球は外国でそれなりに普及しているし、作り方を知っていれば製作は可能だ。
「龕灯は船の上でも使ったことあるが、それが大きさをその半分以下。腰に差したり出来るとなりゃ中々に波乱を呼びそうだな」
「怖いこと言わないで下さいよ…」
すでに存在する技術を広めているだけで、あくまでも後追いの行為ですからね?私が使って考えたという勘違いは止めてほしい。
あと頼んでおいて「やっぱり世界に精通しすぎている」とか本人の前で言うのはダメだと思います。山県有朋卿の言いたいことは分かるものの、私は普通の何処にでもいる人妻なんです。
「お前の頭の中って本当にどうなってるんだ?」
「とくに変なところはないですよ?」
ワシャワシャと優しく頭を撫でてくる左之助さんに首を傾げながら答えるも「そう言ってるが、まだオレに隠し事してるだろ?」と言われる。
転生者ということは絶対に伝えてはいけないことですし、左之助さんに嫌われてしまうのは怖いから絶対に教えることは出来ません。
なにより私の生きる場所は貴方の隣ですから、他に何も要らないんです。家族と幸せに過ごせるのなら、私は怖くても少しずつ歩んでいける。
それを壊さないでほしくないだけです。