今日はなにもすることがありません。
しとりとひとえは左之助さんが連れて遊びに行っていますし、ソウタロスも個魔の方も姉妹の方に付いていっているため、我が家には一人だけです。
いえ、語弊がありますね。ドンと親分、ボスも居ますから一人と三匹になる。しかし、ひとりで過ごすのは随分と久しぶりに感じる。
普段は聴こえる子供達や夫の息遣いや笑い声は聴こえず、ただ静かに風の凪ぐ音だけが聴こえる。心地好くも何処か寂しく思えてしまう。
「静かには、やはり苦手ですね」
そう呟きながら袖の中に仕舞っていた矢立(筆と墨壺など、携帯用の筆記用具)を取り出して、チロリと出した舌先に筆を這わせ、手帳に絵を描く。
最近、分かったことですけど。
私の身体に在るモヂカラと神酒は相互作用を起こし、モヂカラを込めずともある程度は自由に生み出すことが出来るようになっている。
「……フフ、かわいいなあ」
小さな鳥を描けば仲良く飛び立ち、モヂカラを消費し切ると同時にパッと消える。儚くて直ぐに消えてしまうところは怖い。
それでも知ることは大事ですからね。
こういうのは忍法や忍術なんて勘違いする人はいますけど。歴とした技術体系は存在していて、私はその恩恵を譲り受けているだけ。
だから、私の力というわけじゃない。
「……ドクトル、何か用ですか?」
「Sorry。君の邪魔をするつもりはなかった。しかし、随分と君の能力は変質している。あの通りすがりのライダー君が何かしら仕掛けを施している可能性はあるかね?」
「今のところはありません。ただ、カードを渡されて以降の接触も無いです」
そう言って私は袖の中に仕舞っていたカードを取り出す。無地の何もクレストも何も描かれていないライダーカード……のようなものを太陽に翳す。
「一体、誰なんでしょうか?」
「ふむ、面影は見えるがね。君の
緩やかに風が吹き抜ける。
「ドクトル、今日来たのはアレですか?」
「うむ、恒例の転生者会議を開く。ウィリアム君、そして
その言葉に納得する。
現在、奈落によって意識を失った「彼」を除けば日本に転生者は全員揃っている。幻想虎徹は担い手の彼女を引き連れているけれど。
しかし、ヘンリー君は陸奥雷の姿に変わり掛けている。もしも、その彼が不破信二や左之助さんにもう一度会えば完全に姿が混ざるかもしれない。
それだけは絶対に阻止してあげたい。