いつものように庭先で洗濯物を干していると沢山の手荷物を抱えた集団が塀を乗り越え、我が家の縁側に風呂敷に包まれたそれらを置いて帰還していきます。
自分の一派を優遇して貰えるように献上品を贈っているのでしょうか?と考えながら縁側に積み上がった黒漆の木箱を居間へと運び、重たいものは個魔の方に運んで貰い、縁側に積み上がっていた物は無くなりました。
しかし、一体何を贈って?
「妖気や霊気は感じないし、罠や毒も仕掛けられてないから純粋な贈り物なのは事実だな。菓子や食材の類いもあるかも知れないな」
「匂いで分かりますか?」
「大体は反物か小物だな」
そう言うと個魔の方は風呂敷を広げて、冊子や武具の模型等々。お菓子や着物の生地に至るまで有るものの、一際目を惹かれるのは槍だった。
「珍しい」
ハンカチーフを使って穂先に指紋を残さないように柄を取り付けていない穂先のみ鞘に納めた槍を手に取り、静かに見据える。
楕円を描く刀身、笹穂槍の穂先を見る。真っ直ぐ伸びた素槍より刺さったとき、縫合は難しく刺突に適した種類の一つではあります。
「フフ、これはお母様の喜びそうな物ですね」
「そういえば薙刀の使い手だっけ?」
「えぇ、今でこそ糸色流茶道の師範を務めていますが、お母様は元々糸色流薙刀術の門下生だったそうです。華道や茶道、お琴も嗜んでいますよ」
「へえ、意外と近しい出会いなんだ。母者は絵描き以外に出来る事ってあるの?」
「……何故か語弊を感じますけど。私は十のところには糸色流書道の師範代でしたよ(子供に師範代を任せるのは如何な物かとは思いますけど)」
お母様やお父様としては自分の進んできた道を歩んで欲しかったのかも知れませんが、私の場合は身体も弱くて動きも多く多忙な事は無理だったんです。
姿お兄様に至っては私より先に家を飛び出して、世界各地を巡っていた。そういえば
ゾナハ病に掛かっている訳ではないのかしら?
そう思いながら槍の穂先を異様に用意されていることに戸惑いつつ、柄も含めて用意されていたソレを見上げる。間違いなく妖刀「北落師門」ですね。
左之助さんに扱えるでしょうが、蛮竜に比肩し得る気配を放っている。いえ、お互いを牽制するように妖気を放って、居間の空気が張り詰めていく。
「母者、ソイツは触らない方がいい」
「分かっていますよ、危ない気配がします」
そう言って私は他の箱を開けて確かめる。
【概要用語解説】
本作の単語や転生者に関する事を解説します。
【
本名「安居院紗那」。
年齢は数え年の四歳。身長101cm(成長中)。
「ゴールデンカムイ」の物語に登場する旧家のご令嬢として生誕した転生者。凡そ二十年後、原作開始を迎える日に向けて準備を行っている。しかし、お嬢様タイプの性格ではなくお転婆なガキ大将タイプである。
同性の転生者として糸色景やススハムの事は信頼している反面、好きなものには愚直に進んでいく性格上、かなり厳しく父親の指導を受けている。
転生する際に選んだ「特典」は「お金持ちになりたい」と「好きな人と会いたい」。
一つ目の特典は「お金持ちになりたい」は、そのまま生まれる家がお金持ちだったため、現在進行形で叶っているものの、いずれ不自由なき不自由を味わうことになるのかも知れない。
二つ目の特典は「好きな人と会いたい」も同じく転生する『物語』を引き付けるモノとなった。彼女の場合は「鯉登音之進」その人である。