一通りの片付けを終えた私と左之助さんは神谷剣道場や久保田さんの家に赴き、流石に使いきれない食材をお裾分けしていく。
久保田さん、少しだけ窶れてましたね。
噛み傷は見なかったことにしましょう。左之助さんが長谷川くんと井上君にアドバイスをしていた気もするけど、気のせいだと割り切りましょう。
私ではもう救えない場所にいる。
「月岡さんにもお裾分けしますか?」
「したいのは山々なんだがなあ」
「どうしたんですか?」
「アイツ、今東京に居ねえんだよ」
それは、確かに珍しいですね。いつもなら錦絵や新聞の絵を描いている月岡津南が居なくなったとなれば皺寄せは他の物書きに来る。
当然、私に来るでしょうね。それは別に構わないのですが、どうやって余った食材を処理しよう。お鍋をしても全然減らないでしょうから。
いっそのことお野菜は漬け物にして、左之助さんのお摘まみにするのもありですね。
「景、また考え事か?」
「はい。お肉も早く食べないとですから」
「そりゃあそうだが、どうする?しとりもひとえも小さいから食える量は少ないぞ」
「あの、私も」
「景は食えるだろ?栄養はいるからな」
そう言って荷物を運び始める左之助さんに戸惑いつつ、んな量を二人だけで食べるのは無謀なので薫さんに相談して夜に剣道場を借りて、焼き肉になりました。
塩や胡椒も使いますけど。
折角なので焼き肉のタレを作りました。まあ、柑橘系を搾って醤油を混ぜて作った簡易的なポン酢ですが、さっぱりとしているモノが一番です。
「景さん、全然お肉食べてないわよ」
「うっ、すみません」
「剣路、焼けたでござるよ」
「しとり、ひとえ、焼けたぞ」
次々と焼けては継ぎ足される焼き肉を口一杯に頬張る剣路君と違い、しとりもひとえも小さなお口で頑張って食べています。
やはり、お口に詰め込める量は限られますから男の人のように大口で食べるのは難しいですね。もっと大きく口が開けば良いんですけど。
「か、薫さん、もう……」
「ダメよ、景さんは細すぎるんだから」
口許を押さえて訴えるも彼女なりに私の事を案じてくれての行動だと理解できる。けど、流石に沢山のお肉を食べるのは無理です。
「薫殿も食べるでござるよ」
「え、いや」
にこやかに笑ってお肉を差し出す緋村剣心に言い淀む薫さんのお皿を出して、私の分もついでに薫さんのお皿で受け止めて貰います。
フフ、溜め込むからそうなるんですよ。
「ひーのあげるね」
「えっ、あ、ありがとう」
でも結局は私も食べることになります。