どうして、私は志葉家に居るのでしょう。
そう自問自答を行うものの、谷さんは嬉しそうに新刊の冊子に描いたサインを喜び、志葉誠輔はお座敷の上に座り、胡座を掻いている。
「急な呼び立て申し訳無い。糸色殿、早急に新しいモヂカラを込めた鍔を作って欲しい」
いきなり頭を下げる志葉誠輔に驚きながらも着流しの隙間から身体に巻かれた包帯の数に状況を察する。おそらく手強いアヤカシと戦い、手傷を負わせるだけで倒すことが出来なかったのでしょうね。
しかし、フル装備した左之助さんと不得手な武器で互角以上に渡り合える志葉誠輔に手傷を負わせる相手となると血祭ドウコクか彼に比肩し得る剣客だ。
「承知しました。でも、その前に志葉様に傷を負わせた相手の事を教えて頂けますか?」
「……この傷は、鎌鼬のアヤカシだ」
成る程、鎌鼬─────。
うん、候補が三人もいるんですが?と困惑しそうになりつつ、私は手帳を開き、志葉誠輔にアヤカシの特徴を聞いて描き記していく。
「このアヤカシですか?」
「先生の直筆!ください!!」
「え、あ、どうぞ」
手帳に描いたものではなく、持ち歩いている普通の紙にオオツムジを描き直して谷さんに手渡す。嬉しそうに笑っているけど、志葉誠輔を斬った外道衆ですよそれ。
そう言いたい気持ちを堪える。
「で、どうだ?」
「戦い方も聞けましたからやってみましょう」
あまり関わりたくないけれど。
未来の子供達を守るために、私は出来るだけ頑張ります。ただ、いきなり拉致同然のよう「連れ去り」は止めて欲しいです。
それに、まだ作成の終わっていない兜折神の秘伝ディスクを渡すには試験工程を飛ばし過ぎていますし。正直、このまま差し出すのは不安というもある。
普段の志葉誠輔なら問題なく扱えるでしょうが、ゆっくりと橙色に染まり掛けている秘伝ディスクを取り出して、志葉誠輔達に見せる。
「此方はまだ試作段階の秘伝鍔ですが、鎌鼬のアヤカシを討つには適しています。……ただ、ハッキリと言えば試作段階の物なので使ってほしくはありません」
「カブト虫の折神か。二の目を倒すために不足していた戦力の増強にも使える。此度は無理を押し切ってしまい、申し訳ない」
「いえ、大丈夫です。志葉様達を技術的に手助けすると決めたのは糸色家ですし、今後とも日本の平和のために宜しくお願い致します」
そう言って私はお辞儀をする。
「────相分かった。お前達、ぶっつけ本番の一発勝負になるかまも知れないが、俺に命を預けろ」
「「「「はっ。御心のままに」」」」