左之助さんと一緒に帰宅して、私に飛び付いてきたしとりとひとえを落とさないように抱き締める。しかし、そのまま後ろ向きに倒れ、左之助さんに助けて貰う。
正直、ここまで大事になるとは想像していませんでしたから少しだけ昔のように何もかも疑って怯えていた頃の性格に戻ってしまおうかと考える。
鏡面の中を覗き込めるひみつ道具は持っていませんし、ドクトル・バタフライにお願いして届けて貰うのも申し訳無いですよね。
「母様、おかえり!」
「かーしゃま、おかえい!」
「フフ、ただいまです」
よしよしと二人の頭を優しく撫でていると居間と廊下を繋ぐ襖を開けて、ソウタロスと個魔の方が此方を覗き込み、不思議そうにしていました。
まあ、しとりに憑いている個魔の方や、ひとえに憑いているソウタロスは気付いていませんでしたよね。私が不用心だったのも事実ですからね。
「しとりとひとえも気を付けろよ?」
そう言って笑う左之助さんを見上げながら、しとりとひとえの二人は不思議そうに首を傾げている。私は、ひとえを抱っこしようとした瞬間、腰が終わることを察知して、手を繋ぐだけで許して貰えた。
ごめんね、ひ弱なお母さんで……。
「景、なんか頭の上に出てるぞ」
「暗雲かな?」
「個魔の方、雲は人から出来ませんよ」
私は二人の言葉に戸惑いつつ、恐る恐る頭の上を見上げる何か雲みたいなのが居ました。いえ、違いますね。ドクトル・バタフライの寄越したチャフですね。
「オッサンの道具か?」
「流石左之助さん」
「まあ、何度も見てるからな」
確かに、そうですね。日本でも米国でも他の国でも見せて貰いましたから、左之助さんじゃなくても簡単に気付いてしまいますよね。
しかし、どうしてドクトル・バタフライの武装錬金が私の頭上に現れたのでしょうか?と考えつつ、頭の上にあるチャフに触れると受話器に変化した。
「(本当に謎の技術ですよね)……もしもし?」
『Hello。糸色君、ちょっとばかり困ったことになってね。君に連絡しておきたかったんだ』
「……襲撃を受けたんですね」
『HAHAHAHA。流石は糸色君だ、少々錬金戦団に襲われてね。斎藤君達が加勢してくれたおかげで無事に逃げることは出来たよ。そこでね、暫くニュートンアップル女学院の校長として過ごすつもりだ』
「えぇ、お気を付けて」
『君も気を付けたまえよ。Good bye』
そう言うとドクトル・バタフライの武装錬金は霧散するように消えてしまった。あの人なら大丈夫でしょうが、まさか襲撃を受けているなんて想定外でした。