あれから数週間ほど経過した現在、シンケンジャーの使える秘伝ディスクは初代より受け継いできた五つを除けば兜折神と試作段階の物が幾つかです。
その内の二つは舵木と烏賊の二種類。攻守共に戦いやすい物を優先的に作っているけれど。舵木折神の頭突き斬りに関して、私は何も言いません。
「ふおぉぉ…!ここが先生の書斎!」
「あの、谷さん?」
「あ、すみません」
申し訳なさそうに緑色に猿の刺繍を綴った小袖に行燈袴を穿いてショートカットの黒髪を揺らす谷さんは未出版の絵草紙を読もうとしていた手を止め、此方に視線を合わせるように正座に座り直す。
しっかりとした正座姿に感心する反面、チラチラと机の上に束ねている原稿用紙を視線を向けてしまう年相応の愛らしさにクスクスと笑ってしまう。
「コホン。本日はお願いがあって来ました」
「はい。お聞きします」
「大猩々の秘伝鍔を谷家にお貸し下さい」
「……理由を聴いても?」
「猿折神は木のモヂカラを蓄えて力を強めてきた私の大事な相棒───そして、大猩々と言えば猿の進化した姿だって言うじゃないですか」
猿の進化した姿とは?と思わず、私は首を傾げながら彼女の言う言葉に困惑する。猿とゴリラは別種なのですが……まあ、そういうことにしておきましょう。
また大変な事になりそうですし。
「しかし、大猩々の折神を渡すにはまだ色々と試験と実験を終えてからでないと無理ですよ」
「大丈夫です!!動けば行けますから!!」
この超ポジティブな性格は物凄く羨ましいけど。流石に兜折神のように元々存在していた物を作り出す事と、新しく作った物を合わせるのは危険です。
────ですが、断ると毎日来そうですよね。
「……分かりました。でも、危ないと思ったら直ぐに使うのは止めて返しに来て下さいね?」
「はいっ!…………あの、読んでも良いですか?」
「ダメです」
「そこを何とか!般若君に読んだことを話さないし、悪いことはしないから読ませて下さい!!谷家当主としてお願いします!!」
なんで、こんなに圧が強いのかしら?と思いながら彼女のお願いをお断りする。しっかりと待ってくれれば読めるんですからズルはダメです。
「うぅ、先生は厳しいです」
「当たり前の事ですよ、谷さん」
そう言って私はトボトボと帰っていく谷さんを見送り、彼女がどこでゴリラの秘伝ディスクの情報を手に入れたのかと考える。
楯敷ツカサの介入かも知れないですが、向こうのドクトル・バタフライが何とかしてくれているはずですから別件とかんがえるべきなのでしょうか?