「槍使いか。面白い」
「侍相手は慣れてんだよ!」
腑破十臓の振るう通常の裏正の切り落としを虎翼の穂先に生えた左片鎌で受け止めた左之助さんの真横をソウタロスが抜け、両足を揃えての飛び蹴り───ドロップキックを繰り出して、無理やり二人の間合いを抉じ開ける。
「左之助、コイツとやるのはオレだ!」
「阿呆が。お前がオレとコイツの喧嘩に割り込んできてるんだよ、テメェは景達の事を守っててくれりゃあそれだけで良いんだ」
「アホはお前だ。どれだけ強くてもお前は人間なんだよッ、あんなヤバい刀に斬られたら死んじまう……そう、死んじまうんだ……あれ、なんでオレは?」
いきなり左之助さんと口論を始めてしまったソウタロスの動きが止まり、自分の頭を抱えるように悩み始めた彼の姿に違和感を感じる。
まさか、このタイミングで記憶が戻り掛けている?
「狛犬に用は無い!」
「ソウタロス、避けろ!」
───刹那、火花が散る。
刀と槍の火花ではなく、ソウタロスが燃える。
「……オレは、オレは、ハヤタロスだ」
そう呟いたソウタロスの身体は赤く燃える焔模様を纏い、ゆっくりと私達の事を見つめた。いえ、違う、私達ではなくひとえの事を見ている。
「左之助、アイツはオレがやる」
「……ったく。ちゃんと帰ってこいよ?」
「俺は犬と遊ぶ趣味はない」
外道の姿に変わった腑破十臓の顔───赤く染まった
拳打と剣戟の応酬戦。
二人は残像を残す程に鋭く素早く攻撃を繰り出す。しかし、長刀を使う分、腑破十臓のほうが至近距離の戦いでは不利になる。
「……アイツ、まさかしっぺい太郎か?」
個魔の方の呟きに私は納得してしまった。
それなら楯敷ツカサの支配に抗える精神力も、子供の純粋な願いを纏える身体も、契約も完了しているのに過去に飛ばない理由も理解できる。
「チッ。遣りづらい犬だな」
「おうさ。ようやく思い出したからな!」
そう言うとソウタロスは笑い、腑破十臓と戦いを続けている。このままいけば勝てると思っていたとき、橋の隙間から沢山のナナシ達が現れる。
「ななしちゃん!」
「し、しとりのお友達はそこですから?」
「いっぱい!」
ワクワクとするしとりに私の声は届いておらず、なんだか大変な事になってしまったように思いながら、左之助さんに視線を向ける。
ものすごく戦いに飛び込みたいという表情でソウタロスと腑破十臓の事を見つめて、ナナシ連中を殴り倒していました。