ソウタロスの帰ってしまった後、ひとえは彼の使っていた座布団や布団を抱き締めたり、くるまってお昼寝することが増えた。
「かーしゃま、まだ?」
「まだですねえ…」
「んむぅ」
「心配しなくても可愛い可愛いひとえを忘れてしまうなんてことはありませんよ。それに、ひとえが覚えていて上げればソウタロスは消えないですから」
「……ん、わかった」
ムスッとした顔のひとえを優しく抱き締めてあげ、お膝の上に乗せて頭を撫でてあげる。彼女の悲しみを分かっているということは簡単だけれど。
それは、少し違う気がする。
ひとえの寂しいや悲しいという感情は彼女が初めて感じるものであり、彼女の心や生き方を少しずつ広げて、大人になる階段の一段なのかも知れない。
「ひーちゃん、いい子いい子」
「ほんと?」
「ん!だから、泣かないで」
私とひとえの事を見ていたしとりが、そう言って彼女の頭を優しく撫でて笑う。フフ、ひとえを大切に想ってくれているんですよ。
そう私達はひとえに伝える。
ソウタロスは「帰ってくる」と契約を交わしてくれたから、絶対に何があっても貴女の元に帰ってきてくれるから泣かないでほしい。
「ねちゃった?」
「えぇ、寝てしまったわね」
私としとりが傍に居るからか、安心して眠ってしまったひとえを抱っこして寝室に連れていってあげる。また重くなって、ひとえの成長を実感できる。
本当はもう少し緩やかに成長してほしいけれど。子供は気がつくと大人になっていますから、こうして抱っこしてあげられる間に愛してあげたい。
「しとりも一緒にお昼寝しましょうか」
「ん。する」
しとりは嬉しそうにひとえの反対側、私の隣に寝転ぶように布団に倒れ、私の袖を握り締める。私が真ん中で良いのかしら?と首を傾げつつ、大事な愛娘に挟まれて私もお昼寝することにしました。
「(左之助さんが帰ってきたら笑うかもですね)」
そう思いながらひとえとしとりと一緒に寝るために目を閉じて、ゆっくりと穏やかな時間を楽しみ、ふたりの寝息を聴く。
あまり危ないことや危険な事はしてほしくないけれど。しとりとひとえの成長には欠かせないものかも知れないから、それまで待っておきましょう。
「(二人とも、あまり騒がずにいることが増えたのは嬉しくも寂しいとこです。本当ならしとりとひとえの笑い声がまだ聴こえていたかも知れない)」
そうなってほしかったけど。
やっぱり何事も難しく進まないから人生なのかもしれないけれど。ちゃんと待っていましょう。