左之助さんと一緒にドクトル・バタフライから受け取ったものを眺める。見たことのないものに少しだけワクワクする彼に物を手渡す。
「使い方、分かりますか?」
「いや、分からねえな」
そう言って物を見つめる左之助さんに「そうですか」と言葉を返し、刀の柄にも見えるけど。武器には見えないソレを静かに眺める。
やっぱり左之助さんにも分からない物なんですね。ドクトル・バタフライは私に何を思って預けにやって来たのかが分かれば良いんですけど。
やっぱり、それは無い物ねだりですね。
「母様、なにしてるの?」
「しとり、少し考え事ですよ」
朝の稽古を終えて戻ってきたしとりの汗で少し濡れた頭を手拭いで軽く拭いて上げ、お風呂を沸かしている事を伝えてあげる。
「ん!」
「ひーもいく!」
「いいよ、おいでぇ」
しとりの事を追いかけて、ひとえも一緒にお風呂に入りたいと言う妹の言葉を受け止めた彼女の優しさに、ほっこりとしていたその時です。
左之助さんの持っていた物が震え始めていました。
「お、おお?」
「ど、どうしたんでしょうか?」
「しとりとひとえの二人のどっちかに反応しているみてえだが、どうなってやがる?」
そう言って左之助さんの握っていた物を見たとき、ふと違和感に気付く。形状が変わっている、さっきまで刀の柄のように見えていたものが長方形になっている。
あまり見つめているのも怖いので、左之助さんと一緒にソレを箱の中に仕舞い、ガタガタと震える箱に何も書いていない冊子を重ねる。
よし、これで動きも音も無くなりましたね。
「……止まったな」
「そうですね」
「形を変える何かだが、本当に知らねえのか?」
名前か存在が何なのかさえ分かれば答えを出すことは出来ますけど。流石に初見の物体を最初から知っているというのは難しいです。
それに、左之助さんに反応しなかった。
────つまり、しとりとひとえの二人が関わる『物語』に関連する物をあの人は持ってきたというわけです。本当に自由すぎる人です。
「景、なんか溢れてるぞ」
「密閉しましょうか」
「そうだな」
私の提案に納得してくれた左之助さんと一緒に箱の接合部を完全に塞ぎ、ようやく動かなくなったソレを目線をしっかりと合わせる。
……やっぱり、私の知らないものですね。
いえ、この時代で気になるのは『MAO』だ。
しとりとひとえは関わるのかも知れない。でも、あれって現代と大正の世界ですし、その頃には二人は素敵な大人になっているはずですよね?
それなら違うかも?