「左之助さん、左之助さん」
「ん。どうかしたのか?」
「なんで抱き締めてるんですか?」
「寒いからだ」
まだ、初秋になったばかりですよ?と言いたい気持ちを押さえながら焼き芋をしようと言い出した緋村剣心の居る神谷道場にしとりはひとえを連れて行ってしまった。
ここ数日ほどしとりはひとえの事を傍に置き、冊子と布に包まれた箱を警戒している。やっぱりアレは悪いものなのかしらと首を傾げ、箱を訝しむ。
左之助さんもここ数日ほど私の傍に居るか今みたいに抱き締めていることが増えた。何か得体の知れないものから守るみたいに張り付いている感じです。
「景にも分からないヤツがあるからな」
「フフ、心配なんですか?」
「当たり前だろ?大事な女だ」
「………すけこまし」
「なんでだよ?!」
私の罵倒にビックリしている左之助さんの胸元にトンと後頭部を預けて、膝を抱えるように座り直す。小柄な私がもっと小柄に見えるけど。
こうしておけば、左之助さんも抱き締めやすいんじゃないですか?と見上げる。フフ、困ってる顔も格好良くて素敵です。
「……なあ、景」
「はい、なんですか?」
「それ足元見えるのか?」
どういうことだろう?と視線を下に向ける。でも着物とお胸が見えるだけで、特に変なところはないですけど。いったい、どうしたんでしょう。
そう不思議そうに首を傾げる私の頭に顎を乗せ、足と手を絡めてくる左之助さんから逃げようとすると手を掴まれ、ごろんと一緒に居間の畳に倒れる。
「左之助さん?」
「……なんか無性に来るものがある」
「?」
私のお腹に腕を回してよく分からないことを呟く左之助さんのほうに身体の向きを入れ換えて、本当なら目線が合うことのない左之助さんの顔が真横に現れる。
「……フフ、近いですねえ」
「おう」
「足の距離、こんなにあるんですねえ」
183cmある左之助さんに対して、150cm程度の私じゃ届かないのも無理はないですね。それに、こんなに離れていても抱っこしたり抱き締めてもらえる。
好きな人に愛してもらえる多幸感で爆発してしまいそうですけど。彼は私の頬っぺたを撫でながら、眼鏡を外そうとする。
「眼鏡は取っちゃダメです」
「見えなくても良いだろ?」
「な、なんてことを言うんですか…!眼鏡を掛けていないと見えないって知っているのに酷いです、薫さんや恵さんに言っちゃいますからね」
「まてまて、アイツらまだうるさいんだよ」
それは、しとりを剣路君が許嫁認定しているからですね。薫さんとしてはありのようですが、問題は左之助さんなんですよねえ。