烏賊と舵木、虎、猛狒の四体を抱えて鏡面世界に入ると何故かドクトル・バタフライがいた。いえ、確かに鏡面世界を作って整備しているのは彼ですから問題はないのでしょうが、タイミングが良すぎる。
「折神の性能テストかね?」
「そうですけど。ドクトルは?」
「私は整備だ」
そう言うとドクトル・バタフライはチャフを飛ばして半壊した建物を直している途中だったらしく、私は折神のテストを行うべきかを考えてしまう。
ですが、仕事は終わらせるべきですね。
『大』の文字を烏賊折神に重ねるとメートル単位で大きく巨大化していき、ズンと地鳴りを起こして東京府の地面に降り立った。
やっぱり、どうしても巨大化する際、モヂカラを多めに消費しますね。通常の折神もそうですが、力を加えた分だけ相応の力を発揮している。侍武装を行うときに掛かる負荷を考えると、やはり能力にセーブを掛けるしかないですね。
しかし、そうなると五つの折神を集めて作り出す外道衆の二の目に対抗する侍戦隊シンケンジャーの戦力「シンケンオー」をパワーダウンさせないといけない。
無理を強いる行為は好きではないです。
いっそのことダイゴヨウのような人格搭載型のサポートロボットを作るというのもありですが、そういう物を作り出す技術は……ありますけど。
どうしましょうか。
「糸色君、どうしたのかね?」
「え?ああ、いえ…」
ドクトル・バタフライに頼めば作ることは簡単ですが、折神を作るために必要なモヂカラを彼は持っていない。完全無欠の知性とチャフによる攻守一体の技術戦に於いて最強たる彼も専門的な力は持っていない事が多い。
「しかし、大怪獣戦争みたいだな」
「ウルトラ怪獣ですか?」
「大魔神の話だが?」
だいまじん?と首を傾げる私の頭に知らない筈の特撮の記憶と映像が流れてくる。こういうとき、本当に役立つけれど。負荷を考えてほしいですね。
「……ものすごく古くないですか?」
せめてゴジラなら分かりますけど。
「ジェネレーションギャップというやつだね。私としては最近のような気持ちもするのだが」
「えっ」
予想外の言葉に困惑する。
ああ、いえ、確かにそうですね。私と彼の『特典』はスペックは違えど同種ですから思い出すことはずっと出来るわけですもんね。
「なにかあったのかね」
「何でもないですよ、ドクトル」
不思議そうな表情で私を見下ろしているけれど。ドクトル・バタフライが一番不思議な人ですからね?と言いたい気持ちを押さえる。