しょんぼりと帰っていく天兵君と陸奥出海の二人と別れて、しとりは未だに不思議そうにしています。お嫁さんになってほしいというお願いは、まだしとりには早かったようですね。
「ねーしゃま、ひーのおよめしゃん!」
「ん!ひーちゃん、およめさん!」
「……まあ、馬の骨にやるよりマシだな」
「それでいいんですか?」
まあ、私も安心して託すことの出来るお相手を選んで欲しいですが、あと十数年後の未来の物語である『ゴールデンカムイ』に、しとりとひとえは関わる訳ですから、もっと強くて優しくて良い子がいいです。
「左之助さん、帰りましょうか」
「そうだな。しとり、ひとえ、帰るぞ」
「かーしゃま、て!」
「フフ、いいですよぉ♪︎」
「父様と手つなぐね」
「おう。しとりは優しいぜ」
四人で手を繋いで一緒に帰っていると緋村剣心達と遭遇した。今日はよく人に会う日だなと思いつつ、剣路君に視線を向けると私達でもしとりでもなく、私達の背後を睨み付けていました。
「左之、申し訳ないでござるな」
「あー、いや、大丈夫だ。それよりさっきの話を剣路が聴いてたのか?」
「うむ、ハッキリと聴いてしまったようでござる。拙者としては本人の意思を尊重してやりたいのだが、どうにも怒りやすいようでな」
そう言って申し訳なさそうにする緋村剣心から視線を外して、薫さんに視線を向けると「ごめんね。聴く気は無かったんだけど」と彼女も謝ってくれた。
別に悪気が無いのは知っています。
しかし、淡い恋心を掻き乱す展開ですね。
「しとりは、アイツがいいの?」
「?しとりはけんちゃんのほうが好きだよ!」
コテンと可愛らしく小首を傾げたしとりは、そう天真爛漫な裏も何も感じない笑顔で告げた。他意は無いからこそ余計にお辛い……。
「流石は景さんの娘ね。左之助にやってたことをもうしているわ」
「え?」
「ああ、この思わせ振りな態度に何度も我慢を強いられたもんだぜ」
「え?」
「糸色殿、やはり」
な、なんなんですか?
まるで私の悪いところがしとりに遺伝しているように言うのは止めて下さい。しとりも私も何も計算したり悪巧みをしているわけではないですよ。
緋村剣心に至っては「やはり」とか言わないで下さい。その反応をする度に色々な人が私の事を悪い人だと勘違いするんですからね!
「そういえば糸色殿に聴きたいことがあったでござる。近頃、何やら東京を騒がせる下着泥棒が居るのだが、正体を知らぬでござるか?」
「知るわけないでしょう」
思わず、語意を強めてしまったものの。緋村剣心の言っている相手は知りませんし。そもそも下着を盗む輩なんて五万と居るわけですから。