「景さんって、池波さんの幼馴染みなのよね」
「広義的な意味ではそうなりますね」
薫さんと一緒にお茶を飲んでいたとき、何を思ったのか。そう問いかけてきた彼女に答える。しかし、私の実家は長野県信州市、どちらかと言えば左之助さんのほうが実家は近いんですよね。
もしも左之助さんが赤報隊に入っていなければ子供の頃に出会っていたなんていうことも有ったのかも知れないけれど。かもしれないに心踊らせる事はない。
それに私と池波君の関係性は父親同士の交流以外にはありませんでした。まあ、大きくなったら花形役者になるから見に来てとは言われたことあるけど。
「薫さんは興味あるんですか?」
「えぇ、役者の話って面白そうだもの」
そういうものなのかしら?と首を傾げつつ、剣道の稽古に励む剣路君と、彼の竹刀を受け止めて胴を決めるしとりの姿を眺める。
「剣心に似て剣才は凄いんだけど。しとりちゃんは流石は姿さんの姪よね」
「どちらかと言えば左之助さん譲りですね。それに剣路君は女の子だから無意識で手加減してしまっているようですし、中々に大変な関係です」
「女誑しは似ないで欲しいわね」
「そうですねえ」
薫さんの何とも言えない話を聴いていたその時、しとりと剣路君の竹刀の先が触れた瞬間に剣路君の竹刀が真上に弾け、面が決まった。
『秘刀・刃崩し』。「クレヨンしんちゃん」に登場する高速で竹刀の先を弾き、衝撃を蓄積させて武器を奪い取る技ですけど。
しとりは、いつの間に覚えたのかしら?
「なにいまの!?」
「ん!ひっさつわざ!」
フンスと自信満々に胸を張って答えるしとりを凝視する薫さんにイヤな予感を感じてしまい、こっそりと道場の外に出ようとするも手首を掴まれる。
「景さん、しとりちゃんに何を見せたの?」
「……私は何もしていませんからね。しとりが自主的に私の描き直した技絵辞典を読んで覚えているだけで、本当に変なことは教えていませんよ」
「見せて」
「我が家の門外不出で」
「神谷流も描いているんでしょう」
ああ、バレてましたね。
決して私利私欲の売るために描いているわけではなく、個人的に好きなものを書き残しておきたいというものなのです。長野の実家に在る道場にも悠久山和尚の絵を飾っているので『二重の極み』は伝わる筈だ。
「おしえて!」
「ん!」
「ほら、向こうは教えるみたいよ」
「……緋村さんには見せちゃダメですよ?」
「景さん、ひょっとして剣心のこと苦手?」
「だって、あの人私の事を怪しんでいますし」
未だに。
そう未だに怪しんでいるんですよ、