「あれ?」
洗濯物を取り込もうとしていたとき、下着が消えている事に気付いてしまった。しとりとひとえの物は無事ですが、私の下着だけが無くなっていた。
まあ、いずれ帰って来るでしょう。
そう諦めと呆れの感情で家族全員の洗濯物を縁側に置いていき、丁寧に一つずつ畳み、左之助さんと子供達の分を仕分けする。
「ッ、ゲホッ…ケホッ…!」
───次の瞬間、また胸に痛みが走る。
縁側に手をついて咳き込みながら慌てて口許を覆うもポタポタと赤い血が零れて、いつもよりも長く感じる息苦しさに「ひゅぅ、ひゅう」と掠れた呼吸音が聴こえる。
ゆっくりと呼吸を整えるように痛くて苦しい心肺に負担を掛けつつ、喉奥に詰まっていた血の塊を、ゴボリッと地面に吐く。
楯敷ツカサの影響が強まっている。
そうでなければ、ここまで酷い吐血も咳も無かった。私は口許の血をハンカチーフで拭き取って縁側の柱に身体を預け、ボヤける視界を動く影を見つけた。
「…あなた……だぁれ?…」
そう言って問いかけると洗濯物を漁ろうとしていた少年の手が止まり、私と洗濯物を交互に見比べると私の方にやって来て何かを縁側に置いていった。
「……私の、下着?」
じゃあ、さっきの男の子が八宝斎?とビックリしながら塀を飛び越えたところで、もう一度彼の身体は跳ね上がって空に打ち上げる。
多分、塀の向こうに薫さんとかがいたんですね。急いで証拠隠滅しないと、と『消』のモヂカラで血の痕を消して、いそいそと部屋の中に洗濯物を運ぶ。
「…ケホッ……」
また、咳き込んでしまう。
やっぱり、どうしようもないのでしょうね。
どれだけ願っても私の気持ちは届かないし、恐怖も不安も晴れることはない。愛して貰える幸せに酔いしれることも出来ない。
ひどく、辛い。
「左之助さんに会いたいなあ…」
どうしようもなく情けない気持ちですが、誰かのために残ることが出来るのなら幸せです。左之助さん、しとり、ひとえ、個魔の方、ドン、親分、ボス、みんなに笑っていてほしい。
そのために長生きしていたい。
そう願いながらも私の胸は痛みを訴えるばかりだ。悲しくて悲しくて仕方がない。
みんなの洗濯物を各々の箪笥に仕舞って、私は居間の机に身体を預けるように上半身を机の上に伸ばし、座る。少しだけ足を崩し、目を細める。
ほんのちょっとだけ疲れました。
今だけお休みさせて下さい。そう座布団の上で丸まっている三びきに視線を向け、クスリと笑って静かに私は目を瞑るのだった。